2009年7月、時のヒラリー国務長官はバンコク空港で、「米国が帰ってきた」と述べた。オバマ政権がアジアを米国の戦略の「主要任務」としてから、米国は政治・軍事・経済・外交などのさまざまな手段により、全面的にアジア太平洋に展開している。
しかし7年が経つが、米国の「アジア太平洋リバランス戦略」はアジアに、ホワイトハウスが称するような「安定と繁栄」をもたらしていないばかりか、アジア太平洋の不穏の源になっている。「アジア太平洋リバランス」の実質について、言葉を濁すホワイトハウスと比べ、米国防総省ははっきりと指し示している。カータ国防長官は米海軍士官学校で講演した際に、「地域の安全と秩序の主な維持者として、米軍は中国からの脅威に対応する長期計画を立てる必要がある。米軍が現地で実施しているリバランスは、長期的な取り組みとなる」と述べた。つまり米国の「アジア太平洋回帰」は、米国のアジア太平洋における主導的地位を固め、中国の台頭をけん制するためのものだ。
この「米国の利益を最優先」するという狙いに基づき「アジア太平洋リバランス」を行えば、主に次のような悪影響が生じる。
政治・外交面で、米国は日韓豪比などとの二国間同盟関係を強化する一方で、東南アジア・南アジア諸国の抱き込みに力を入れ、米国のアジア太平洋における同盟関係を構築しようとした。しかし米国のこの「結託文化」は、アジア諸国が中国と米国のどちらを選ぶかという選択問題を避けていることはさておき、客観的に見てもアジア太平洋の大国間の競争を拡大するリスクがある。
軍事面で、米国はアジア太平洋への武器配備を拡大し、海軍の6割を太平洋に配備するとしている。軍事同盟を強化し、かつ南中国海・東中国海問題、朝鮮の核問題など地域内の問題に積極的に介入している。米国は近年「航行の自由」を口実とし、南中国海の海域における「巡航」を拡大し、西太平洋で風を呼び波を立てている。これに合わせ、米国は右翼の「歴史修正主義」の道を狂奔する日本を「容認」、支持することで、アジア諸国内の摩擦を激化させている。
経済面で、米国は環太平洋経済連携協定(TPP)により、アジアの経済協力を主導し、新たな貿易ルールを作ろうとしている。しかしアジア諸国の経済協力はこれまで順調に行われており、中国はすでに日韓豪やASEANなどの周辺諸国にとって最大の貿易相手国、主な相互投資パートナーになっている。各国には自身の経済方針がある。