巨大な歴史的影響を持つ長征は、その勝利から80年にわたって、多くの外国人を魅了してきた。彼らは、紅軍の長征という歴史をそれぞれの視点から眺め、中国と世界に対する長征精神の影響に思いを馳せた。80年前の中国紅軍による長征はなぜ今も、彼らの情熱を呼び起こしているのだろうか。米国人作家アグネス・スメドレーは、「長征は、革命戦争史上の偉大な史詩であり、かつそれをはるかに上回る意味を持つ」との言葉を残している。
スイス人宣教師ボスハルト『神霊の手』
スイス人で英国プロテスタントの宣教師ルドルフ・ボスハルトが英国で出版した回顧録『神霊の手』(The Restraining Hand)は、紅軍の長征を西側世界に紹介した、これまでに発見されている中で最初の著作である。米国人ジャーナリストのエドガー・スノーの「中国の赤い星」よりも1年早く出版されている。
1934年10月初め、ボスハルトは貴州で、転戦中の紅軍第六軍団によって「スパイ」として拘束され、同軍団とともに長征に参加した。1936年4月、ボスハルトは紅軍によって釈放された。この時期の経歴に基づき、ボスハルトは、回顧録『神霊の手』を記した。書中には、軍に随行した見聞が記され、紅軍と長征に対するボスハルトの見方が示されている。ボスハルトは「自序」でこのように記している。「多くの報道は、紅軍が我々を拘束したことから、紅軍を『匪賊』や『強盗』としている。実際には、紅軍の指導者は、共産主義とマルクス・レーニン主義の信者であり、その原理の実践者である」
「神霊の手」は、長征を自ら体験した外国人の記述した著作であり、紅軍の戦闘や生活、政治・思想活動展開の様子をありのままに記録し、柔軟に変化する紅軍の戦略・戦術や紅軍の統一戦線展開の様子を新鮮な角度から示したもので、紅軍の長征史を研究する際、重要な史料としての価値を持つ著作と言える。