空母は国家の軍事力を象徴し、大洋を駆け巡り、四海を威服する。ところがこの巨大船はどれもが生まれついての寵児ではなく、悪運に見舞われることもある。
米空母「ユナイテッド・ステーツ」、建造が中止
第二次大戦後、時のトルーマン大統領は空母「ユナイテッド・ステーツ」の建造を批准した。設計によると、同艦は核爆弾を搭載するP2V-3C爆撃機を発着艦させることができる。満載排水量は8万3000トン。現在の基準でも、同艦は巨大と言える。
1949年4月18日、米ニューポート・ニューズ造船所でキールの設置が開始されたが、そのわずか5日後、ルイス・ジョンソン国防長官は軍事費削減のため、空母建造取り消しの命令を出した。
海軍トップを含む複数の海軍高官がこれに憤り、集団辞職した。しかしジョンソン国防長官はまったくひるまず、「海軍が存在する必要はない。海軍がやるすべてのことを空軍でもできる。だから海軍の出る幕ではない」と豪語した。
同艦の建造中止から1カ月後、ジェームズ・フォレスタル前国防長官がうつ病により、海軍の病院の16階から飛び降り自殺した。フォレスタルは空母発展に一生を捧げたが、トルーマンの政策に反対したことで更迭された。