米国が今月2日に正式に中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱すると、新任のエスパー米国務長官はアジアに地上発射型中距離ミサイルを配備すると発表した。近・中距離ミサイルの射程距離は500−5500キロ。この距離の範囲内には、西太平洋方面の第二列島線内(豪州北部を含む)、インド洋方面のディエゴガルシア島、中央アジア・西アジア方面の米国の同盟国、北米方面のアラスカとアリューシャン列島が含まれる。米国の中距離ミサイルのアーチは、軍事戦略専門家の戴旭氏が指摘した「C形包囲網」に沿っている。その重点はアジア、すなわち第一・第二列島線にある。近距離ミサイルの重点は第一列島線。
米国は、第一列島線はすでに継ぎ接ぎだらけであり、修復が必要と考えている。中国海軍・空軍は近年、第一列島線の出入りを常態化させ、定例訓練を実施している。米国はこれに対応するため戦力を割けず、日本も軍機・軍艦を派遣し監視することしかできない。そこで日本は宮古島に少量の地上発射型対艦ミサイルを配備し、一部の揚陸部隊を発足した。これらの措置は、戦時中に第一列島線の外に向けて出撃する中国の強い軍事力にとっては、蚊に刺された程度にしかならない。米シンクタンク・ランド研究所はこのほど、中国がミサイルを80発打てば、米国のアジアにおける56の基地を麻痺状態にできることを論証した。これは中国の近・中距離ミサイルの脅威を誇張している可能性があるが、米国が中国軍の脅威を実感していることは疑いようもない。
そこで米国は第二列島線の取り組みを強化し、特にグアム島と南太平洋の基地の建設を強化している。攻撃を受けやすい高価値の海空装備品を第二列島線に撤退させている。それでは米軍は第一列島線を放棄するのだろうか。現在、放棄ではなく少数精鋭という答えが出された。少数の人員で操作する近距離ミサイルを残し、これに防空及び地上発射型対艦ミサイルを加え、コストパフォーマンスが最も高い資源配置を求める。第一列島線で中国と戦場の主導権を争う。
中距離ミサイル配備の目的は、中国の戦略的奥行きを脅かし、これを攻撃することで、中国の戦争の潜在力を損ねることにある。射程距離5000キロの中距離ミサイルをグアム島に配備すれば、中国のウルムチ以東のほぼ全域を直接脅かすことができる。インド洋のディエゴガルシア米軍基地は、雲南省・貴州省・四川省の戦略的要衝の脅威となる。中央アジア・西アジアの同盟国に配備する中距離ミサイルは、中国の西寧以西の新疆、チベット、青海という中国全土の半分の脅威になる。当然ながらヨーロッパ・ロシアの一部の脅威にもなる。アリューシャン列島に配備すれば、中国北方、それからロシア極東の脅威になる。そのため中国の全域が「C形包囲網」の脅威にさらされ、一部地域はこの脅威が重なることになる。