『ウォールストリートジャーナル』に掲載された記事「中国の検閲制度と政治プロパガンダが引き起こしたリバウンド」と、『ニューヨークタイムズ』の記事「新型肺炎の感染拡大が中国の強大な宣伝マシンを弱体化させている」を目にした。これらの記事は、「中国の感染症対策は失敗している」と明言している。そしてその失敗の「原因」は、中国政府のガバナンスと中国メディアの報道にあると指摘している。
しかし、実際の情勢はそれとは真逆だ。数字を見れば、2月中旬以降に「良い数値」は増加を続け、「悪い数値」は減少する一方だ。湖北省を除く各省・自治区や、武漢を除く湖北省内の各地では、新たに確認された感染者の数と死亡者数はいずれも低い水準かゼロを維持している。社会に混乱もなく、市民生活は基本的に正常に保たれている。
管理面を見ても、病床数が患者数を上回ったことから臨時病院1軒が無事に閉院を迎えたほか、多くの省・市が緊急対応レベルを下方修正し、生産活動も徐々に回復している。また、功績をあげた担当者を昇進させ、能力のない担当者を即刻辞任させるなど、人事面の改善も行われている。 そして中国のメディアはというと、どう見てもエールを送る応援団のようである。病院や社区(コミュニティ)での助け合いなどの美談を紹介することで人々を励ましつつも、さまざまな問題点を取り上げ、その原因を突き止めている。
これで、政府のガバナンスとメディアの報道の一体どこに落ち度があると言うのだろうか。危機を前にして重要なのは、責め合うことではなく、パニックにならないように国民のメンタルをケアし、自信を高めることではないか。 世界保健機関(WHO)の事務局長補を務めるブルース・エイルワード博士は先日、合同専門家チームを率いて武漢を視察した。米ヴォックスメディア傘下のオンラインニュースサイト『Vox.com』のインタビューに応じた際、エイルワード博士は今回の中国視察について「印象的だったのは2つ。1つ目はスピーディなところ。中国から学んだのがまずそのスピードだ。スピードはすべてだ。感染の確認、隔離の実施、濃厚接触者の追跡は早ければ早いほど成功率が高まる。2つ目は行動力。対策が決まれば、すぐに行動に移している。全方位的に感染者と濃厚接触者の追跡をすれば、局面を切り開き、感染拡大を食い止め、危篤者を助けることができる」と語った。