WHOで緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は4日、ポンペオ米国務長官が前日に息巻いたウイルスが中国の研究所から発生したとの陰謀論について、「臆測の域を出ない」とし、「WHOは証拠に基づく組織」だとの見解を示した。
「多くの証拠」があるという米高官だが、これまでに一度も彼らの言い分がデマではないという裏付けを示していない。ウイルスの発生源という科学的問題を政治の弾にしようとする米政府のやり口に懐疑的な声が上がっている。
4日にホワイトハウスで行われた記者ブリーフィングで、米政府の新型コロナウイルス対策を主導しているアンソニー・ファウチ博士は「新型コロナウイルスは中国の研究所で操作や作成されたものではない」と指摘した。英語圏5ヶ国の情報機関「ファイブ・アイズ」や中国批判で米国に追従するオーストラリアまでも「ウイルスの発生源は武漢の研究所」とする説に懐疑的だという。
すべての失敗を中国のせいにするため科学をも顧みない米高官。いち早く経済を回復するため米政府は公衆衛生の専門家の警告にも耳をかさない。米政府のある報告草案によると、ロックダウン(都市封鎖)解除後、米国の新規感染者は1日当たり20万人に達する可能性があるとの驚くべき予測をニューヨーク・タイムズが明らかにした。CNNは、米国の経済回復には無数の米国人の命という黒い代償が伴うと報じた。
■米国の情報同盟国:研究所の事故ではない
「ウイルスの発生源に関する説について、我々は米政府からデータ或いは明確な証拠を受け取っていない」。4日ジュネーブで行われたWHOのテレビ会議で、マイク・ライアン氏は米国の説は「臆測の域を出ない」との見解を示した。仏AFP通信は、トランプ大統領は中国の感染症への対応について益々批判の声を高め、新型コロナウイルスが武漢の研究所から発生した証拠があると論じていると報じた。ポンペオ米国務長官はそのすぐ後に「米国は多くの証拠を握っている」と高言した。ライアン氏「根拠に基づく組織である以上、我々はウイルスの発生源に関するいかなる情報提供も歓迎するが、ウイルスの発生源に関する疑問で追跡調査を迫るのは政治問題だ」と述べた。
マリア・ファン・ケルクホーフェWHO新興感染症対策チーム長も「新型コロナウイルスに関する1万5000の遺伝子配列を確保しているが、 我々が確認したところでは、すべて自然から発生したものだ」と語った。CNNは、世界各国の科学者はウイルスの発生源に関する陰謀論を批判しており、新型コロナウイルスは野生動物から発生したものとの見方が強いと伝えた。
4日に米ナショナルジオグラフィック誌の取材に応じたファウチ氏は再度、新型コロナウイルスは研究所から発生したものではないとし、「このウイルスは人為的に発生したものではなく、自然界で進化し種を越えて徐々に伝播したという有力な科学的根拠がある」と強調。また、野外で新型コロナウイルスを発見後、研究所から事故で漏えいしたという説についても否定した。米誌ニューズウィークは、米国の新型コロナ対策は科学の代表だとして、ファウチ氏の観点はトランプ大統領とポンペオ米国務長官と相反すると論説した。
米国の情報同盟国でさえポンペオ米国務長官流のデマはやり過ぎだとの見方が強い。CNNが5日「ファイブ・アイズ」の情報筋の話として伝えたところによれば、トランプ大統領とポンペオ米国務長官の発言は「ファイブ・アイズ」の予測を大きく上回るものだった。ある西側の高官らも新型ウイルスは中国の市場からで、研究所の事故で拡大した可能性は極めて低いというのが「ファイブ・アイズ」の見方と明かした。「ウイルスがどうやって市場に持ち込まれたかは定かではない」とある情報筋は話す。
「ファイブ・アイズ」によって準備された「研究文書」の大部分の内容は公に報道されたもので、特に機密情報はないとオーストラリアの複数の情報筋はシドニー・モーニング・ヘラルドとタイムズに明かす。またオーストラリアの情報機関は米国高官の「証拠を握っている」という発言に懐疑的だという。いわゆる「独立調査」を強く求めているオーストラリアだが、モリソン豪首相は5日、トランプ大統領の説はないとは言い切れないが、新型コロナが野生動物を扱う海鮮市場を発生源とするという観点を覆す証拠は見当たらないと指摘した。
ウイルスの発生源は複雑な科学的問題であって、科学者や専門家が答えを導き出すべきだ。米テュレーン大学医学院のロバート・ゲイリー博士は「武漢の海鮮市場は新型コロナの発生源ではなく、分析の結果、それより早い発生源がある可能性がある」とメディアに明かした。米政治家によって捏造された「ウイルスの発生源は武漢の研究所」説についてCNNは、トランプ政権は今後その証拠提供を求める圧力にさらされると報じた。大統領や外交官の発言こそ過激化しているが、いまだ何ら証拠は提供されていない。
ロシアの経済情報サイトは、米国はすでに中国に対して挑発的な情報戦を発動したと分析する。崔天凱在米国中国大使は5日夜の取材で、一番早く感染が報告された地域がウイルスの発生源となった地域とは限らないと表明。現在、米国やヨーロッパでは武漢より早い段階の感染者が相次ぎ確認されている。その背景にある理由は科学者が探求することだろう。社会的地位が高いからといって、IQやEQが正比例するとは限らない。疑り深く、事実と科学を信じない人間もいる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年5月8日