魔鬼城の物語 |
ウルホ魔鬼城。ウルホは有名な石油都市であるクラマイ市の一つの区。ウルホから南に百キロ行くと、クラマイの油田が広がり、おびただしい石油の汲み上げポンプが忙しく働いている(写真・居建新) |
青々とした山と清らかな川に恵まれたカナス自然保護区から出て、国道217号線を南へ4時間余り走ると、クラマイの「魔鬼城」に着く。
土と砂礫の大地であるゴビの中に、うねうねと続く古い砦のような「建物」が見えてくる。しかしこれは人工的な建築ではない。砂と土で自然に造られた城――有名なウルホ魔鬼城である。
魔鬼城を、地元の蒙古族は「スルムハク」と呼び、カザフ族は「シャイタンクルシ」と呼ぶが、どちらも「魔物が出没する場所」を意味する。人跡まれなゴビの中に、砂山や岩石が連綿と続いたり、ぽつんと聳え立ったりしていて、城のようで城ではなく、果てしなく広がっている。そうした風景から人々は、ここに魔物が住んでいるのではないかと思わずにはいられないのだろう。
魔鬼城の総面積は約120平方キロで、東京23区の五分の一くらいの広さだ。一望すると視野が果てしなく広がっているようだが、実際はその地形はかなり複雑だ。魔鬼城の中心部の風景区は、もし観光客が道路標識に従って歩かないと、魔鬼城の奥地に誤って入り込み易い。それはまるで、魔物にさらわれてしまったかのようだ。そうなったら、地元の捜索隊に出動してもらうほかはない。
新疆では、すべての標示が漢字とウイグル文字で書かれている |
魔鬼城の風の音も恐ろしい。ここは四季を問わず、狂風が絶えずに吹いていて、普通、風速約25メートル以上に達する。夕方になると、ゴビから吹きつける狂風が、凄まじい音を発する。地元の人によると、その音は、時に狼のうなり声や金切り声、赤ちゃんの泣き声などにも聞こえることがあり、その奇怪な声が、魔鬼城をさらに神秘的で恐ろしいものにしている。
この魔鬼城の魅力が、多くの監督にここを映画のロケ地に選ばせた。有名な『グリーン・デスティニー』の中で、章子怡の演じる玉嬌竜と張震の演じる羅小虎の愛の物語は、この土地から始まった。
現在の魔鬼城は荒涼とし、恐ろしいが、今から一億年前の白亜紀には、ここはにぎやかだった。魔鬼城があるウルホ地区は、当時は巨大な淡水湖であり、湖の周辺はウルホ剣竜、首長竜、ジュンガル翼竜などの大型古生物が生息していた。しかし地殻運動により、ウルホ湖の湖底はしだいに上昇して陸地になり、長い年月にわたり風と砂に浸食されて、現在の魔鬼城が形成されたのである。
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