四川省と陝西省の境に位置する米倉山は、東西に広がる弓型の山脈で、西端は大巴山地につながる。弓の背側は北に面し、「陝西江南」と呼ばれる漢中平原、弓の腹側は南に面し、「天府之国」と称される四川盆地である。豊かな物産、美しい自然に恵まれ、野生動物が数多く生息する。恐竜や海生生物の化石もたくさん発見されている。
また、奇抜な形をした岩峰や地下河川、鍾乳洞が多く、カルスト地形の宝庫でもある。池や湖がいたるところに点在し、滝が勢いよく流れ落ちている。かつて、中原から四川盆地へ抜けるには、必ずここを通らなければならなかった。
米倉山には石灰岩や白雲岩の円錐形の岩峰が数多くあり、南麓から北を眺めると、峰々が雲の上にそびえ立つ様を目にすることができる。一見、広西チワン族自治区や貴州省一帯の岩峰群に似ているが、米倉山の岩峰群はほとんどが山脈の中で形成されたものであるに対して、貴州や広西の岩峰群は盆地の中で形成されたものである。米倉山の岩層の主体は花崗岩、変質砂岩、石灰岩、白雲岩。主峰の光霧山は標高2507メートル、丸みを帯びているが、これは花崗岩の球状風化、凍結風化の結果である。
米倉山でもっとも奇抜でもっとも壮観な峰は、二つの円柱形の岩峰が連なった鼓城山だろう。鼓城山は旺蒼県鼓城郷の七里峡に位置する。二つの岩峰は約1キロ離れてそびえ立ち、まるで林海の中から突き出てきた巨大な天鼓のよう。外壁は険しいが山頂は平らで、下部は四方にゆるやかに伸びる。雪食凹地には原始林が広がり、秋が深まると木々が鮮やかに色づいて、色とりどりのリボンに巻かれる。二つの天鼓はこのリボンに引き立てられ、空に向かって勢いよくそびえ立つ。