「交通が不便で外部との交渉が少なかったことが、この地の民間芸能の保存にかえって役立った」。地元の人はこう言うが、では、道路が通り、鉄道が通り、インターネットが通じるような現代において、左権の社火節は今後もこのままの姿を保っていけるだろうか。
都市化や現代化で便利な生活を手に入れたかわりに、人間関係が希薄になり伝統行事や民間芸能が失われつつある大都市。これから産業発展を成し遂げようと意気込む農村が、それと同じ轍を踏まないとは限らない。農村が現代化と産業発展を遂げつつ伝統行事や民間芸能を守っていくことはできるのだろうか?地方政府主導の大型パレードや花火大会はそのための施策の1つだろう。
それと同時に、伝承者自身が伝統を守ろうとする強い意志も必要だと思う。演者・観客ともに笑顔が弾けた左権の「串火盤」からは、自分たちの伝統を心からいつくしみ、楽しむ精神が感じられた。勢いよく燃え上がるかがり火にあたりながら、「この笑顔こそが伝統保存の一番の原動力だ」との思いを強くした。
(写真はすべて筆者写す)
「北京週報日本語版」2012年2月15日