中国国務院報道弁公室主任の基調報告
敬愛する友人諸氏
1260年以上の昔、中国唐朝の僧・鑑真は5度の失敗を重ねた後、数ヶ月という時間を経て日本―この美しい島国の土を踏んだ。それが現在では、飛行機ならば北京から東京まで2時間半で行けるようになっている。これは現代科学技術が人類にもたらした恩恵のひとつである。21世紀の今日、情報化、デジタルか、地球村などの新しい言葉が人々の論議に乗せられるようになっている。これはまさにインターネットがもたらされた変化である。インターネットは、瞬く間に人々の生活において重要な役割を担うようになったが、人類にとって、その意義はテクノロジーや経済そのものをはるかに超え、私たちに広範で新しいチャンスと挑戦の空間をもたらした。この空間が最終的にどこまで拡大されるのかは、今でさえ人々には想像すらつかないが、インターネットが地域と時間の障害を打破し、私たち一人一人の関わり合いをより緊密にして、国際交流をこれまで以上に容易で有効なものに変え、人々の生活に豊富な色彩を添えたことは確かな事実である。
今日、中国では、インターネットも所詮は儚い流行であると言う者はなくなり、真剣にその建設、学習、活用に取り組んでいる。中国では1987年からインターネットを利用した電子メールの送受信が始まり、1990年にはドイツのある大学に依頼して中国のドメインサーバーの運営を開始した。1992年、日本の神戸で開催された国際インターネットの年次会において中国は正式に国際インターネットへの接続要求を提出し、1994年になってようやく接続が実現した。中国では国際インターネットとの接続直後から、全社会に向けて商業化されたサービスが開始され、中国のニュースメディアも国外のメディアとほぼ同時に1995年から続々とネット上に進出している。これよりニュースメディアのネット化の波が高まり、人民網、新華網、中国網、中国日報網、国際オンライン、中央電視台国際網など、ニュースメディアによるウェブサイトの開設も急速に発展したのである。こうして誕生したネットメディアは従来の伝統的メディアの支持に支えられながら、次第に広大な中国のネチズンを獲得し、ニュース情報配信の主要ルートに成長すると同時に、他の多くのウェブサイトのニュースソースになったのである。これらのウェブサイトは数カ国語のページをそれぞれ有し、そこで権威ある情報を提供することが可能になっているばかりでなく、日本で開かれているウェブサイトもあり、アメリカにそのミラーサイトを持つネットメディアもある。現在のところ、全国の2000紙以上の新聞、8000種以上の定期刊行物、290局以上のラジオ局、420社以上のテレビ局により、3000以上のウェブサイトまたはホームページが開かれており、インターネットのニュース配信における作用と役割は日増しに大きくなってきている。
中国ではニュースメディアのネット化の過程において、テレビの視聴率、新聞の発行部数ならびにラジオのリスナー数にマイナス影響が及ぶのではないかと危惧する向きもあったが、事実はそれが杞憂であったことを証明している。新しいメディアの台頭は伝統メディアを過去に押しやることなく、むしろ相互の長短を補い合い促進し合うという形勢を生み出している。更に予測を超えることには、インターネット上に進出して以来、伝統メディアはかえってその知名度が高め、中にはこれを契機に経営状態が改善されたメディアもある。だが同時に、伝統メディアのインターネット利用の過程で、いくつかの問題が存在していることにわれわれは気づいた。その主なものは、伝統メディアに従事するスタッフが従来の習慣を改めえず、思うようにインターネットのスクリーン上に情報を載せることができていないということである。ネチズイの要求により適応したページを完成させていくため、われわれには新しいタイプの専門スタッフを養成する必要がまだ残されている。
中国のニュースメディアのネット化のプロセスは、中国のインターネット業界の発展と緊密に係わっていると言えるだろう。中国政府は、インターネットの発展はグローバルインフォーメーションの趨勢であるとし、中国にとっては貴重な発展のチャンスであると認識している。中国政府と人民は、如何にインターネットを活用して中国の現代化を進め、国民経済と社会の情報化を実現していくかを積極的に探求し続けている。その中で最も明確な重要項目は、ニュースメディアのウェブサイト開設を支持するということである。中国はこれまでにも巨額の資金をインターネットの基礎施設に投入しており、全国の各都市の間に総合で179万kmに及ぶ光ファイバー・ケーブルを施設し、本年に入ってからの三ヶ月の間にも33万kmを増設した。今日、中国では電話回線さえあればどこからでも、地域の電話会社を通じてインターネットに接続が可能になっている。中国インターネット情報センター(CNNIC)の統計では、今年の年初の段階で、中国のインターネットユーザーは3370万人に達し、wwwのサイトは28万を超え、国際接続帯域幅は7.6Gとなっている。アメリカの大手ニールセン・ネットレイティングの最新調査は、中国の家庭内ユーザーの数は世界第2位の5660万人に達しているとしている。中国のインターネット発展情況については、アメリカのほうがわれわれ以上に楽観的な観測を持っているようである。
しかし、中国のインターネット発展にも地域の不均衡という問題が存在しており、「数字の溝」が存在するとも言われている。中国のインターネットユーザーは北京、上海、広州などの大都市に集中しており、特に以上の3都市ではユーザー人口が地域人口の4分の1を上回っている。私は中国からこの「数字の溝」を消し去ることに自信を持っている。その根拠は、中国政府と人民の情報化に対する強烈な意識、毎月5%〜6%の伸び率で増え続けるインターネットユーザー、中国がこれまでに建設した整った電信基礎施設、インターネットユーザー予備軍と見られるそれぞれ1億8500万人、1億5500万人に達する固定回線と移動回線の電話ユーザーにほかならない。2005年には中国のインターネットユーザーは2億人に達するものと見込まれる。
インターネットの発展の不均衡は世界的な現象であり、「数字の溝」の存在は世界的な課題でもある。アメリカのIDCが発表した研究報告では、昨年末の段階で世界のインターネットユーザーの総数は4億9770万人で、アメリカがその中に占める割合は29.2%、西欧が29.8%、アジア太平洋地区(日本も含む)が22.5%、その他の地域は12.5%となっている。目下、アジアの国家間においてもインターネットの発展情況に不均衡が見られる。普及率が比較的高い国家は日本、韓国、シンガポールであり、中国の普及率は現在のところ総人口に対して2.6%となっている。
インターネットユーザーは経済の発展に伴い必ず増加するものと考えられるため、その普及情況の格差は恐れるべきものではないが、ネット上の情報量と内容がまだユーザーの要求を満たすだけのレベルに達していないことは憂慮すべき問題であろう。ある研究報告では、全世界のウェブサイトの総数に、英語が占める割合は68.4%、日本語が5.9%、中国語が3.9%、ハングルが1.3%となっていた。この数字は、非英語圏のアジア諸国においてさえ格差が非常に大きいことを示している。先月、海南省の博鰲で開催されたアジアフォーラムの席上で、私は「情報化時代に入った今こそ、私たちはひとつの問題を考えねばなりません」と、問題を提起した。それは、アジアの国家は如何にすれば、過去の蒸気機関、電力、無線電信、原子力、そして航空機時代のような、西洋諸国に数十年も遅れた状態に甘んじずにすむのであろうか、というものである。私は、アジア諸国は、協力を強化し、情報関連機器およびソフトなどの核心技術の把握に努め、母国語による情報内容を向上発展させる一方で、インターネットの発展過程にあってもなお、民族文化の保護と発展に勤まねばならないと認識している。
インターネットという領域分野において、中日の協力はやはり重要であるが、われわれは非常に恵まれた条件をすでに有している。それは、中日両国の人民とニュースメディア業界が、インターネットが中日交流と協力において重要な役割を果たすということを認識しているということである。中日両国の国民、とりわけ経済界とメディア業界が互いに相手側の国情と発展に大いに関心を寄せ、インターネット上に現れる中日関係の動きを見守っている。インターネットを活用して積極的に交流が持たれている今日、このような交流の機会に恵まれた時代は両国国民には未だかつてなかったといえるだろう。
中国のニュースメディア界は、インターネットでの日本の皆さんに対する情報提供サービスを重視している。新華網(www.xinhuanet.com)、人民網(www.people.com.cn)、中国網(www.china.org.cn)、国際オンライン(www.cri.com.cn)など、4社の全国規模のニュースメディアが開設するウェブサイトはもちろんのこと、四川新聞網(www.newssc.net)のような地方のニュースメディアも、そのウェブサイトに中国情勢、中日関係報道、経済協力情報、旅行、留学、株式情報などを日本語のウェブページを開設しているのである。私は中国語を学ぶ日本人、日本語を学ぶ中国人の増加と、インターネットの増進に従って、中国人民の間の交流と友好に存在する障害が取り除かれ、インターネットが果たす役割もますます大きくなるものと信ずる。また、われわれは、中日両国人民が相互理解を深めていく上で、インターネットは最も有益な手段であると信じている。
私は喜びをもって皆様に、中国の高等教育機関において、ますます多くの学生が専修課程として、或いは第二外国語として日本語を選択しているということを、ご報告する。また、中国語を学ぶ日本の学生もますます増えていると聞き及んでいる。どちらも喜ばしい現象であると私は思う。更に私たちには素晴らしい環境も整っている。それは、昨年末に両国のネットが473Mの光ファイバー・ケーブルによって直結ばれたことである。これにより、日本でも中国でも相手方のウェブサイトへのアクセスに要する時間が大いに短縮されている。
不思議とさえ思えるインターネットが私たちの距離を引き寄せた今、私たちがともに直面している好機を怪しむ理由は除かれた。鑑真和尚と阿倍仲麻呂を思えば交流と協力に注ぐ力を惜しむ理由も見つからない。私は、両国のネットワーク・ステーションが互いに人員を派遣し、業務と人材育成を行き、ともに関心を寄せる共同テーマについて研究討論を進めていくことを、ここに提議する。
互いに共同努力を惜しまず、中日両国人民の親善のため、インターネットに今以上の大きな力を発揮させしめようではありませんか。
ご清聴、ありがとうございました。