I T革命下の中日関係

  |  2001-04-26

I T革命下の中日関係。「平和と発展」が新世紀の最も重要なテーマであることは誰も否定できないだろう。それに次ぐテーマは経済のグローバル化とIT革命、そしてこの発展をどう維持するかである。このような時代の命題に対して、中日関係はどうあるべきなのだろうか…

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発信時間:2001-04-26 15:37:01 | チャイナネット | 編集者にメールを送る
 「平和と発展」が新世紀の最も重要なテーマであることは誰も否定できないだろう。それに次ぐテーマは経済のグローバル化とIT革命、そしてこの発展をどう維持するかである。このような時代の命題に対して、中日関係はどうあるべきなのだろうか。

 「平和と発展」の時代

 「平和と発展」がなぜ時代のテーマとなるのか、その理由は以下である。

 20世紀は、「戦争の世紀」だった。前半の45年間には、二つの世界大戦が勃発し、後半の45年間には、冷戦と地域間紛争が絶えることがなかった。終盤の90年代に入り、人々は大戦と冷戦の影響下からようやく抜け出したかのように見えたが、最後の十年も結局はイラクのクウェート侵攻に始まり、アメリカ主導のNATO軍によるユーゴ空爆に終わった。人々の戦争への憎しみは、再びそれを繰り返さないことに帰結した。新世紀、人類はこれまでの生存のあり方を変えた。「平和の世紀」への渇望は、どの時代にもまして高まっている。

 そして、経済のグローバル化に伴い、世界各国は何よりも経済を重視し、経済発展を政策の中心に据えている。同時に経済的利益と安全のもたらす利益は、全地球規模で、相互依存を深めている。各国の対外戦略は、国内政策の延長として、何よりも平和と安定を目標とする。今や敵国を爆撃するのは、結局のところ自国の市場と投資に爆弾を落とすようなものだからだ。

 そしてコンピューターとインターネットに代表されるIT革命は、地球を席巻しており、インターネット対応機能付き携帯電話、電子商取引など、新しいツールやシステムが続々と生まれている。そして時代は、中国、日本、アメリカ、イギリスなど六カ国がヒトの遺伝子解読を予想より早く終えようとしている時であり、IT革命と並ぶ、生命科学の革命もが進行中という激動の時である。

 科学技術の発達は、より健康的、合理的で質の高い新文明の可能性を目の前に見せてくれた。豊かな可能性を戦争で断つのはあまりにも惜しい。ましてや軍事大国でもある先進国の人々は、何にもまして平和を求め紛争を恐れる。そして地球環境には、もはや再度の全面戦争は許されない。今度戦争をすれば、人類は地球とともに全滅することになるだろう。

 「平和と発展」は、当然中日関係においても最も重要なテーマとなっている。1998年11月、江沢民国家主席の訪日時には「平和と発展のための友好協力パートナーシップ構築に関する中日共同宣言」が発表された。その最も重要な拠り所は、中日両国は、すでに五つの面で「第一位」を成し遂げていることだ(①日本は中国にとって第一位の貿易相手国である。②1999年3月までの統計では、日本は中国への直接投資額が第一位である。③日本は中国にとって第一位の技術輸入先である。④日本政府の政府開発援助は、諸外国政府からの中国に対する援助総額の第一位で、最大の援助国である。⑤中国への投資実行額累計は日本が第一位である)。

 経済のグローバル化のなかで

 現代的生産力にとって、国家というステージはすでに過去のものとなり、それを越えた地域、または全世界がその舞台となっている。

 これこそ経済のグローバル化の実質である。封建制社会が奴隷制社会に交代し、資本主義社会が封建制社会にとって代わったその理由はすべて、生産力の要求であった。生産力の発展は、人類の歴史を前方に推し進め、旧弊した社会制度を改める。歴史的観点からしても、経済のグローバル化は免れない方向だろう。

 中日の経済、科学技術の関係も、経済のグローバル化のなかでとらえれば、その生産力の発展は当然、中日関係の発展と東南アジア諸国の協力による推進力を必要とする。現在、中日関係および東南アジア諸国において障害となっている諸問題も、いずれは生産力の発展が政治的矛盾を相克することだろう。これは、単なる願望を客観的法則にすりかえているのではなく、事実に即した法則である。遅かれ早かれ、中日両国政府と人民の主体的な努力により、突破はなされるであろう。

 持続的発展のために

 持続的発展は、全人類の課題であり、そこには環境、資源、食糧などの諸問題が含まれる。現時点では、環境問題が突出している。各国の工業化に伴って刻々と先鋭化する環境汚染の解決は、すでに一刻の猶予も許されない段階だ。そして環境問題に関しては、近距離にある国家間には、多くの共通課題および利益がある。例えば広域にわたって被害を及ぼす酸性雨など、環境問題は、国境の壁で防げるものではない。

 特に中日両国は、一方が驚くべき速さで工業化を成し遂げた国であり、一方は工業化の段階にある国である。環境問題に関して豊富な経験を持ち、かつ大量生産、大量消費で地球環境に大きな負担を与えている日本が、この問題について協力関係を強化することは、両国共通の利益であることはもちろん、その益は、子孫の代まで伝えられるものである。

 特に指摘しておきたいのは、情報技術方面における協力を強めることにより、中日両国は、社会の情報ネットワーク化をすすめ、そのことで、中日両国の持続的発展が可能になるのはもちろん、環境問題の面でも解決がはかられる点である。情報ネットワーク社会は、工業化社会に比べ「資源節約型」という特徴があるからだ。例えば電子商取引は、盲目的な生産による浪費を減少させるだろう。ネットワークを利用した、中間業者を省いた経済システムは、生産効率をあげ、コストを減らし、物流を大きく効率化するだろう。インターネットによるIT革命は、生産、流通、消費の面において大きな効果をあげるとともに、資源節約においても巨大な利益をもたらすだろう。

 IT革命のもたらすもの

 IT革命は、現在、世界を席巻している。この革命は中日関係において、千載一遇のチャンスであると同時に、恐ろしい挑戦でもある。このチャンスをとらえ、勇敢に立ち向かうことが、中日両国の新世紀の発展のために重要となってくる。

 中国はなぜ、今なお発展途上国であり、工業国ではないのだろうか? その答えは、二百年前イギリスで始まった産業革命に乗じるチャンスを逃したことにある。そして百年前には、電気やモーターなどが発明された第二次産業革命のチャンスをも逃した。そして今回の新しい産業革命は、90年代のアメリカに、かつてなかったほどの経済的変革と繁栄をもたらした。我々は、このチャンスを絶対に逃すことはできない。また見逃せば、それは一時代をすべて失うことになる。 

 日本は第二次産業革命のチャンスをとらえ、アジアで唯一の先進国となった。しかし90年代、日本は戦後最大の不景気を経験し、90年代は「失われた10年」だったと多くの人々が感じている。日本は結局のところ、何を失ったのだろうか?それは、IT革命のチャンスである。バブル期の日本では、ふくれあがった余剰資金は不動産につぎこまれ、情報技術などのベンチャー企業に投資がなされることはなかった。これはすなわち、金融業をふくむ日本企業は、工業国の旧体制のままであり、政府の政策もIT革命下の需要に沿うものではなかったということだ。

 現在、中日両国のIT革命における協力の可能性や、情報技術における中日間の格差を低く見積もる傾向が見られる。中国のメディアには、日本が情報技術でいかに遅れをとっているか、中国の巨大な携帯電話市場でアメリカがいかに先行しているか、電子商取引はアメリカの一人勝ちである、というような話題が頻繁に掲載されている。しかし、それでも中日の情報技術には、大きな格差があり、協力できる領域、項目が確かにある。

 第一に、光ケーブル通信やインターネットと携帯電話端末をつなぐモバイル・コンピューティング技術で中日の協力を強化することだ。

 現在、中国の個人所有コンピューターの台数は、二千万台である。この数は少なくはないが、12億の人口から見れば、普及率はごく低い。ただし、携帯電話やテレビから接続できるようになれば、インターネットの利用者数は、飛躍的に増加し、インターネット、そして電子商取引の普及にも大きな推進力となることだろう。中国のインターネット対応機能付き携帯電話は2000年3月からすでにサービスを開始しているが、採用されたのはWAP(小型端末でインターネットを利用するための通信規約)対応携帯電話で、使用には手間がかかり、アクセスの速度は遅く、コンテンツの内容は乏しい。その結果、6千万といわれる携帯電話の所持者のなかで、この機能の利用者はわずか0.1%のみというありさまだ。

 インターネット対応機能付きの携帯電話のアイデアは、そもそも欧米で生まれたものだが、それで最も成功しているのは、間違いなく日本だ。1999年2月、NTTドコモがiモードを開始して以来、インターネット対応機能付き携帯電話の利用者は約1年で千五百万人を突破した。このデータは、日本の総人口の8分の1、携帯電話利用者の4分の1が、携帯電話からインターネットに接続していることを示している。

中国のインターネットおよび電子商取引を発展させるために、中日両国は、iモード対応携帯電話のサービスシステムにおいて協力を始めるべきだ。この決断によって、中国のコンピューターやデジタルテレビの普及速度をあげ、IT革命を加速させることができる。

 堺屋太一・元経済企画庁長官は、「日本は近い将来、モバイル・コンピューティングの分野において、アメリカをしのぐことだろう」「中国では有線通信網の整備には膨大な時間がかかるが、無線通信の分野は、飛躍的速度で発展できる」と発言している。アジアの特色あるインターネットを推し進めるにあたり、モバイル・コンピューティング事業には、中日間の協力が不可欠である。

 第二に、流通、とくに物流の領域で、協力を強化する。

 中国の電子商取引は、品物がなかなか届かないという現象が起きている。ホームページなど電子商取引のための門戸は雨後の筍のような勢いで増え続けているが、商品の配送、支払いなど物流、金融方面で多大なる制約を受けている。特に物流面での制約は大きい。物流システムの遅れは、電子商取引の発展に大きな障害となっている。

 早くも80年代、中国は日本から物流方面において最新の技術と理念を積極的にとりいれた。今後の物流と電子商取引において、中日の協力方式には、以下のものがある。(1)中日合資企業は、受発注、および販売方面の電子商取引化を推し進め、中国の企業間、および企業と消費者間の電子商取引の発展を刺激するモデルとなる(2)日本の物流企業が中国企業と合弁、合資を行う(3)中国の郵政主導の物流システムを改善するため、日本の先進技術を導入する、などである。

 第三に、IT革命のハード面において協力を行うこと。 情報技術が進化をとげるにつれ、ハード面は、例えば半導体チップなどに対する要求が刻々と高まっている。現在、NECは上海華虹グループとの共同出資により設立した工場で、0.35ミクロンの半導体チップの生産を開始している。今後二、三年以内には、中国は日本から0.25ミクロンのIC(集積回路)生産技術を導入する予定である。これは、日本の半導体産業にとって、大きな市場となることだろう。

 第四には、ITのソフト面での協力である。 中国とインドは人口大国であり、同時に多くのソフトウェア技術者を世に送り出している。この方面で日本は深刻な人手不足である。このような状況のなか、ソフトウェアにおける中日協力の可能性はより拡大している。最近、中国の北大方正は日本のリクルートから大きな契約を受注した。北大方正のDTP(コンピューター画面上での編集、印刷)ソフトウェアに百万ドルもの値がつき、リクルートに売れたのだ。今後中日のソフトウェア方面での協力はますます高まることだろう。

 第五は、新世紀の情報ネットワーク社会の基礎作りにおける中日協力である。

 新世紀のネットワーク社会には、高度道路交通システム(ITS)の整備が欠かせない。

 日本の大企業は国内において高度道路交通システムの技術開発にしのぎを削るとともに、国外への懸命の売り込みをはかっている。例えばトヨタは、1995年、中国の交通部(省)と交渉を開始している。そして高速道路での道路交通情報通信システム(VICS)や自動料金徴収システム(ETC)において、中国の道路上で実際に試験を繰り返している。 

 今後、高度道路交通システム方面には、特に協力が可能な重点項目がある。(1)高速道路の自動料金徴収システム。高速道路での渋滞の35%は、料金所で起きている。この問題は日を追って深刻化しており、中国は早晩このシステムを導入しなくてはならない。(2)道路交通の安全性を目的としたシステム。2002年には、自動運転道路(AHS)の完成が可能といわれる。四、五秒前に運動物体を、一、二秒前に障害物に気がつけば、交通事故の90%は防止できるといわれている。中国では年間8〜9万人もの交通事故による死者が出ており、こうしたシステムの導入には大きな意義がある。(3)道路交通管理システムの強化。北京には世界でも稀なほど幅の広い道路があるが、それでも渋滞が著しい。その大きな原因の一つが道路交通管理システムの不備であり、この方面に情報技術の果たす役割は大きい。特にこうしたシステムの導入によって、通行人の安全をより守ることができるようになれば、その価値はいうまでもないだろう。

 第六には、文化交流の強化だ。

 あるホームページが人気を呼ぶかどうかは、内容にかかっている。インターネットとそれを含む多くのマルチメディアは、要するに単なる道具であり、内容こそが命である。私達は、インターネットを商品を流通させるためのベルトコンベヤーのように見るべきでなく、その無限の空間の広がりを認識すべきだ。中日交流を深めることは、両国のネット文化の発展にもつながる。IT革命を契機として、二千年の歴史ある中日交流は、新たなピークを迎えることができる。

 第七に、情報技術を駆使しての教育方面の協力である。

 70年代末から80年代初頭にかけて、中日両国は留学生を交換するようになり、その数は日を追って増えている。情報技術は、従来の通信教育などと区別して「e教育」と呼ばれる新教育方式を生み出し、この流れは中日間に新しいタイプの留学生を育成することだろう。「国内留学」とでもいおうか、海外に行かずとも留学が可能になり、中国などの発展途上国にとっては、人材の流出を防ぐ効果も生まれる。「国内留学」の留学生の数はそのまま、中国に留まった優秀な人材の数といえるだろう。

 第八に、漢字の統一にも大きな可能性が生まれる。

 韓国の金大中大統領は、かつて中日韓首脳会談で、「私達は現在それぞれ違った漢字を用いていますが、源は同じ漢字ですから、お互い簡単に意志疎通ができます。このような漢字文化圏の貴重な価値をもっと重視すべきではないでしょうか」と述べた。もし漢字が統一されれば、中国の十数億人、朝鮮半島の一億人、それに日本の一億人が同じ文字文化のなかで交流することになる。これはIT革命のチャンスをとらえ、発展させていくにあたり、漢字文化圏にとってたいへんに有利な条件となるだけでなく、将来的には漢字文化圏に対する多大な貢献となる。

 第九に、IT革命下における制度および政策についての対話、交流、協力を強化する。

 IT革命は、新産業革命であり、第一次、二次の産業革命以来、徐々に形成された現行制度と法律をおびやかしつつある。この創造的破壊に対して、制度、法律はどうあるべきなのか、対話、交流、協力が欠かせない。例えばサイバー空間での貿易や電子商取引に関する法整備、課税などの問題は、IT革命下の重要な国際的課題であり、中日間でもそれは例外ではない。

総じていえば、情報技術における中日交流を強化することは、双方に巨大な益をもたらすものである。

――筆者馮昭奎・中国社会科学院日本研究所研究員は、長く中日関係を研究対象とし、特に中日の政治、経済の領域で大きな業績をあげている。新世紀の情報技術(IT)の変革のなか、中日関係は今後どのようにあるべきか、その方向性を分析して頂いた。

「人民中国」(2001年2月号より)

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