円安が経済成長を刺激できるかどうかは非常に疑わしい。日本では国内総生産に輸出が占める割合はわずか10%。円安により短期的には輸出増加が期待できるが、輸出というエンジンだけに頼っていては日本経済という極めて重たい列車を走らせることはできない。円安はアジア各国の通貨が対円で値上がりすることを意味しており、日本の輸入コストの増加につながる。日本の輸出メーカーは周辺国から半製品や原材料を輸入する必要があるため、過度な円安は日本メーカーの輸出競争力にマイナス影響を与える恐れがある。
一方、円安は輸出にとってプラスとなるかもしれないが、日本の金融機関の利益を損なう可能性が高い。円安により海外資産を大量に抱える日本の銀行の自己資本比率が押し下げられる。円安が進めば、国際決済銀行(BIS、本部:スイス・バーゼル)による自己資本比率の基準を満たすため、日本の商業銀行は海外資産を回収しなければならなくなる。
そのほかにも、経済や金融分野の開放が進んだ日本では、国の財産や企業の資産・利益はいずれもドル建てで計算しなければならないため、自国通貨の値下がりが行き過ぎると、国の財産、国内総生産、企業資産・利益・売上など競争力を示す指標はすべて目減りすると同時に、外貨の購買力や競争力が大きく上昇することになる。このように、円安は日本経済、企業、金融に対する外貨の浸透力や支配力を大幅に高め、日本の地位や競争力が危うくなる恐れがある。
最終的には、各国は円建て外貨準備を縮小し、国際的決済通貨としての日本円の地位は低下するであろう。
円安は最終的に(1)日本政府は円安が無意味であることに気づき、外為市場への干渉を強めざるを得なくなる(2)日本政府は円安をこのまま放置し、結果的に世界経済の混乱を招く――といった2つのシナリオをもたらす可能性が高いことを指摘したい。
「人民網日本語版」2002年1月10日