虎渓は伏虎渓の略称、峨眉山の伏虎寺の下をめぐって流れ、長さ400メートルもある。伏虎嶺に源を発し、寺のそばにある瑜伽河に流れ込む。この伏虎渓は建築家の間「生い茂る森の中に伏せている虎」、観光スポットに入る前の「さきぶれ」といわれている。
虎渓は木々が生い茂った森や草地、谷間を曲がりくねって通りぬけ、落差も大きく水面の幅も狭い。水面にはさまざまな形の石が縦横に点在している。
伏虎寺と書かれた山門の後ろには、小道にそって虎浴、虎渓と虎嘯という三つの橋が伏虎渓にかかっている。この三つの橋は精緻に築造され、それぞれ形も異なり、三角形を呈している。虎渓の水の流れやかなりの樹齢のクスノキ、奇岩怪石、小さな橋、コケがいっぱいの小道、日射しを通さぬ木陰などの景色が溶け合うようになって、大変趣きがある。観光客は欄干にもたれかかったり、岩に寄りかかったりして、水の音に耳を傾けることができる。
伏虎渓に訪れた古今の著名人は、詩や対句を詠んでその美しさをたたえている。橋には現代の人が書いた対句もある。
中国人民解放軍の元帥であった故朱徳全人代委員長は1969年4月に峨眉山を視察した際、詩を数首残している。そのうちの『伏虎寺』は虎渓をたたえたものである。
離垢園内浄無塵、清風旋舞掃浮雲。
林木繁多蔵古寺、山渓流水似琴声。
(垢を離れて園内、浄にして塵無く、清風旋舞して、浮雲を掃く。林木繁多にして古寺に蔵し、山の渓の流水琴の声に似る)
橋の下を流れる水は奇岩怪石に突き当たり、両側の草をさらうように流れて、白いしぶきを上げ、琴の音のように聞こえる。さらさら流れる水は、単調に聞こえるが、ハーモニーを感じとることができる。虎渓の水は昔から流れつづけており、林と谷の間で峨眉山の歴史と文明を育んできたのである。
「チャイナネット」2002年5月30日