中日の間の領事館事件についての国際法による分析

  |  2002-06-07

中日の間の領事館事件についての国際法による分析。

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発信時間:2002-06-07 13:58:19 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

中日の間の領事館事件の中で、中国側は領事館の尊厳をあえて侵害するようなことはしておらず、領事館の執務を妨げる動機もなく、身分不明なる者の不法な突入を避けることのほか、領事館にいかなる影響を与えることはしていない。筆者は、領事館には尊厳があるが、駐在している国にももちろん尊厳があり、日本側が事件の後に中国側に抗議を申し入れるとともに、たえず事態をエスカレートさせ、拡大すべきではなかったと見ている。

5月8日、5人の朝鮮人が中国の瀋陽市駐在日本総領事館にしゃにむに突入し、さえぎっても効果がない状況のもとで、そのうちの2人が突入に成功したが、中国の武装警察はすぐ領事館に入ってその2人を連れ出した。この事件は一時期において外交上の紛争になるとともに、マスメディアの焦点となった。

日本側は日本領事館の外交官にミスがあったことを認めているとはいえ、日本領事館の外交官の同意を得たという中国側の言い分を否定している。中国の調査の結果が事実にかなうものでありさえすれば、この出来事は全く問題にはならないものであった。この論文はこの事実についての争いはさて置き、国際法の関連規定に基づいてこの事件に対する処理について述べてみたいと思っている。

領事館の建物を侵害してはならないということ

1963年の「領事関係ウィーン条約」は国際社会の領事関係に存在する慣習としてのルールについて系統的に書き上げられたものである。その第三十一条は「領事館の建物の不可侵権」というルールについて次のように規定している。

一、領事館の建物は本条の限度内で侵害してはならない。

二、受け入れ国の官吏が領事館の長あるいはそれが指定した要員あるいは派遣国大使館の長の同意を得ないなら、領事館の建物の中の領事館の執務のためにもっぱら供される部分に入ってはならない。ただ火災あるいはその他の災害が発生し、直ちに保護の行動をとらなければならない場合のみに限って、領事館の長がすでに同意したものと推定してもよい。

三、本条第二項に別に規定があるものを除き、受け入れ国はあらゆる適切な段取りをとって領事館の建物が侵入と損害をこうむらないよう保護するとともに、領事館の安寧を撹乱するか領事館の尊厳を損なうことを防ぐ特殊な責任を担っている。

普通の状況のもとで、同意を得ないなら領事館に入ってはならないことはいささかも疑いをはさむ余地はない。しかし、「領事関係ウィーン条約」の規定から見ると、これは絶対的なものではなく、少なくとも具体的な事件に対し具体的に対処するとともに、条約の趣旨と条約のその他の条項と結び付けて全般的分析を行うべきであると言える。

現代国際法に基づいて、領事の特権と免除の根拠は「代表説」と「職務必要説」があり、つまり領事館は主権国を代表するものであり、その国に対する尊重から出発し、および領事館に領事の職務を履行する条件を持たせるために領事館と領事官に一定の特権と免除を与えているのである。

在来の国際法の中では、大使館と領事館を派遣国の「領土の延長」と見なしていたが、こうした「治外法権説」は現実にそぐわないため現代社会においては捨て去られた。従って、「領事関係ウィーン条約」の前書きの中では、「このような特権と免除の目的は個人に利益を与えることではなく、領事館が自国を代表して効果的に職務を履行することができるのを確保することにある」と明言している。

事実上、外交・領事特権と免除ひいては国際法そのものは国際社会の正常な運営と発展の必要からのものである。受け入れ国は派遣国と連係をとり、両国の協力関係を発展させる必要があり、他国の外交官と領事に優遇を与えることは派遣国に対する尊重と関係要員の職務履行における必要を満たすことから出発したものであるばかりでなく、同時に受け入れ国そのものの対外関係を発展させる必要からのものでもある。

正常な国家関係を妨げるべきではないこと

国連国際裁判所はイランのテヘラン駐在アメリカ外交官と領事関係要員にかかわる事件で、「外交機構およびそれに伴う特権と免除は多くの世紀以来の試練に耐えるとともに、国際社会の中で効果的な協力を行う重要な手段の一つであることを裏付けるものであった」としている。

協力の手段である以上、それを機械的に利用して正常な国家関係を妨げるべきではない。この事件の中では、「ウィーン条約」第三十一条第三項によれば、中国の武装警察は領事館の安全を守り、侵入と損害を受けさせない特殊な責任を担っており、領事館に強引に突入するものが現れたかんじんな場面に直面して、領事館に入って突入者を連れ出したことは領事館の安全を守る行為でもあることを否定することはできない。

中国側には領事館の尊厳を侵害し、および領事館の執務を妨害する動機はなく、身分不明なる者の不法突入をさえぎること以外、別に領事館にいかなる影響も与えることはなかった。こうした状況のもとで、日本側が事後に抗議を申し入れるとともに、たえず事態をエスカレートさせ、拡大していることは適切ではない。

実践の中で、国際条約の関連規定に基づいて、ある国が事件の具体的な情状に照らして事後に関係要員の免除を放棄したことは、関係ルールを偏って執行することはせず、これによって両国間の友好関係にプラスとなるようにするためであった。例えば、数年前、ザイールの前大統領がかつて声明を発表し、パリで自動車を運転して児童をひき殺す事件を起こしたザイール大使の免除を放棄したことがそれである。

日本政府が領事の特権と免除に関心を寄せ、領事館の不可侵のルールを守ろうとしている立場は理解できるものであるが、それに固執し、ひいてはまず中国が領事館への不法突入者を釈放することを要求し、それから領事館への不法突入者を引き渡すことを要求していることは行き過ぎである。

「領事関係ウィーン条約」第五十五条は領事館が「受け入れ国の法律とルールを尊重しなければならない」と次のように明確に規定している。

一、領事の特権と免除を妨げない状況のもとで、およそこの特権と免除を享有する要員は、いずれも受け入れ国の法律とルールを尊重する義務がある。これらの要員には当該国の内政に干渉しない義務がある。

二、領事館の建物は領事の職務履行にそぐわないいかなる使途に使われてはならない。

領事館には尊厳があるが、駐在国にももちろん尊厳がある。そして、領事館は駐在国の許可のもとで領事の実務を処理する職能に従事することのみであり、その他の国の要員を庇う場所ではなく、駐在国の属地管轄権に思いのままに干渉し、対抗することはできない。

皮肉なことはほかでもなく、今日盛んに大騒ぎしている日本において、その警察筋が1998年5月に東京駐在中国大使館の同意を得ない状況のもとで、日本駐在中国大使館に入って「身分不明なるもの」を連れ去ったことである。

外交事件の発生は避け難いものであり、重視すべきなのは国際法に基づいて正しく適切に処理することである。

(柳華文 作者は中国社会科学院法学研究所国際法室研究員補佐)

「チャイナネット」 2002年6月7日

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