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四川大地震が中国経済に与える影響(特別企画)
発信時間: 2008-05-23 | チャイナネット

 

地震による損失

 

 

四川大地震 経済損失は2000億元に上る可能性も

四川大地震の中国経済への影響が次第に明らかになるにつれ、専門家は今回の地震による経済損失は、年の初めに起こった雪害による1516億5000万元の損失をはるかに上回ると予想している。関係部門の初歩的な推計では、地震による四川省の工業企業の損失は670億元を上回り、1万4000社以上の企業が被害を受け、個人財産の損失は企業の損失をはるかに上回っていると見ている…

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政府の経済面の対策

 

被災地復旧に中央財政は700億元を拠出、国家機関の経費予算の5%を削減

 

 温家宝総理は5月21日、北京で国務院常務会議を開き、地震対策を引き続き手抜かりなく行い、マクロ調整を強化して物価上昇を抑制し、経済の安定かつ速い発展を維持することを強調した。また被災地の復旧に中央財政が700億元を拠出し、「各クラスの党・政府機関と国有企業・事業体は、会議、接待、出張、公用車などの経費を削減し、海外出張の回数を控える。公用車の購入を制限し、党・政府機関のオフィスビルの建設への認可を一時停止する。中央国家機関の今年の公用経費は予算より5%減らし、地震対策の費用に当てる」ことを明らかにした …

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 関連業界の対策

 保監会、地震被害関連の保険金支払いで指導原則

リスクが抑制できることを前提に、人身傷害及び健康保険関連の保険について、事実が明らかな場合は保険金の支払い手続きを簡素化し、早急に保険金を保険加入者に支払う…

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銀監会 金融機関に地震に伴う顧客の債務清算を通知

債務者が今回の地震により巨額の損失を受け、且つ債務返済不能、あるいは保険返済、担保返済後にも債務が残った場合、債務返済不能と認定し、これをすみやかに清算するよう求めている …

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中国経済への影響とは、専門家たちの見方

 

 

課題1:中国経済への影響は全体的なものか、それとも局部的なものにとどまるか。

 

中国政法大学経済研究センター 劉紀鵬教授 
 中~長期的にみれば、被災地域の面積は小さく、そこでは経済もそれほど発達しておらず、鉄道や高速道路などの幹線交通を直接マヒさせる大雪・凍結災害などと異なり、地震の影響は一部の地域的な交通システムにしか及ばない。よって経済への実質的な影響は限定的だと考えられる… 

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外交学院国際金融センター 欧明剛主任

 このたびの地震が全国の経済や四川省の経済に与える影響はそれほど大きくなく、国のマクロ経済の発展情勢が変化する可能性もない。このため現在の政府のマクロ経済政策には地震による変更はない。また大量の支援物資・義捐金が被災地に流入すれば、「住む所」の問題が短期間に解決され、さらには被災地経済の急成長に向けたチャンスが生まれるものと予想される …

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中国社会科学院金融研究所 易憲容研究員

 現在政府が進めているさまざまな取り組みをみると、このたびの地震は新たな経済成長の起点になる可能性がある。なぜなら地震により民族的精神が集結したからだ。民族的精神が民族の創造力を刺激するそのはたらきは計り知れないもので、もしも政府がこの点を認識して、適切な政策調整を行って各方面の利益をはかれば、今後の経済発展の中で個々人の価値が体現され、中国経済に新たな成長周期が訪れる可能性がある…

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 中国社会科学院経済研究所 袁鋼明研究員

  このたびの地震が中国に与える影響は必ずや全面的なものになる。影響は局部に限られるという人がいれば、それは地理的な影響のことだ。経済的視点で被害や影響を語る場合。それは必ずや中国全体の被害の話になる…

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 国務院発展研究センターの専門家・巴曙松

地震が経済成長のすう勢を変えることはありえない。中国経済の基本情勢は当面、健全なスピードの発展大勢を維持し、関連マクロ調整政策の実施に伴い、政府活動報告で提出された2008年経済活動目標は実現可能と見られる。しかし、経済運行において際立った問題となっている「三過(過度の貿易黒字・過剰投資・過剰流動性)」現象はある程度緩和されるものの、十分な解決には至らない見通し…

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課題2:中央銀行の利上げ政策への影響は


 

 中国国際経済関係学会 景学成・常務研究員

中央銀行の利上げ政策と四川大地震には直接の関係はない。震災救済の資金は主に、国家財政の支出と各方面からの寄付によってまかなわれるからだ。利上げは、マクロ経済が過熱傾向となった時に、中央銀行がマクロ調整を行う手段の1つだ。また中国における利率市場化や利子構造調整などの改革も、利上げを通じて行われる。利上げそのものに対する地震の影響は大きくない。

 

 中央財経大学銀行研究センター 郭田勇主任

  利上げは普通、2つの作用を持つ。1つは、企業の経営コストを増やし、企業の投資行為を一定程度抑制し、経済を引き締める作用。もう1つは、政策のシグナル的な作用、つまり貨幣引き締め政策を続けていくことを知らせる作用だ。地震が発生し救援活動が展開されている現在は、中央銀行の利上げにとってふさわしい時期とは言えない。救援活動と被災地復興の主力は国家財政であるものの、銀行の資金貸し付けによる援助も必要だ。そのため地震発生後、中央銀行が利上げに踏み切る可能性は小さい。

 

 

課題3:地震で穀物価格は高騰するか

 

  中央財経大学銀行研究センター 郭田勇主任

  地震の後、穀物価格は必ずや一定の上昇圧力にさらされるが、地震により穀物生産が減少するとは限らない。これは被災地の地理的状況と関連することだ。四川省は「天府糧倉」(肥沃な穀倉地帯)と呼ばれ、穀物生産地は主に成都付近の平野部や盆地に集中している。今回の地震で深刻な被害を受けたブン川県や北川県が省全体の穀物生産に果たす役割を考えれば、穀物減産の可能性は大きくない。だが養豚の状況が食品価格をある程度押し上げることは考えられる。

 

  中国政法大学経済研究センター 劉紀鵬教授

  地震の被害は、好調傾向にある今年の全国の農業生産に根本的な影響を与えることはないだろう。農産品価格は全体的に安定を維持する見込みだ。今回のマグニチュード(M)8.0の大型地震により、物価に対する懸念が高まっている。また中国人民銀行(中央銀行)がこのほど預金準備率を0.5ポイント引き上げたことも、近い将来の金利引き上げ観測を再燃させている。だが地震による物価高騰は短期的なもので、現在、消費者物価指数(CPI)に上昇圧力をもたらしているさまざまな原因の中では、非食品類価格の影響が高まりつつある。このため中央銀行は今後しばらくの間、金利引き上げツールを使用しないと思われる。 今回の地震は、被災地の農業に重大な損失を与えた。だが今年の全国の農業生産はなお好調で、地震被害が農業の発展に与える影響を考えると、今年の農業生産に根本的な影響を与えることはないだろう。

 

 外交学院国際金融センター 欧明剛主任

  四川省は穀物生産と養豚の盛んな省であり、このため今回の地震が高止まりしている消費者物価指数(CPI)への一層大きな圧力になるとの見方を示す人がいる。実際にはそうではない。第一に、今回の地震の影響を受けた地域は、四川省全体でみるとそれほど広くなく、わずか1%ほどだ。第二に、地震は突発的な出来事であり、影響は短期的だ。今回の地震が一段落すれば、国の力を借りて、住環境の再建を短期間で終わらせることができる。被害が特に深刻だった地域を除き、被害が軽かった地域では生産が急速に回復するものとみられる。
 

 

ブン川地震と阪神大地震 経済影響を比較

 ブン川大地震による犠牲者数は、阪神大震災時よりかなり多いが、経済に及ぼす影響は阪神大地震ほど深刻ではないだろう。四川省では、農業がかなり重要な地位を占めているが、同省の被災地人口、GDPおよび工業の付加価値額が全国に占める割合は、1995年阪神大地震の被災地の約4分の1にすぎない… 

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「チャイナネット」「人民網日本語版」2008年5月27日

 

 
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