最も懸念されるのは、伝統的な穀物輸出国が輸入国に変わりつつあることだ。たとえば欧州連合(EU)はかつて世界の穀倉地帯だったが、07年7月以降は備蓄が減ってきた。ロイター社は、EUの備蓄量は一時50万トンまで減少したと伝えている。07年下半期以降、EUは世界各国から520万トンを超える穀物を輸入しており、より多く穀物を買い入れ、備蓄を増やすために、08年6月までに穀物の輸入関税を一時撤廃するなどの措置も取っている。世界の穀物備蓄が減るとともに、EUの穀倉地帯であるウクライナでも備蓄が減り、07年は過去40年間で最低の備蓄量を記録。これを受けて、ウクライナ政府は穀物の輸出制限を決定した。
世界最大のトウモロコシ生産国・米国が推進するトウモロコシ利用のバイオエタノール製造政策では、同国生産のトウモロコシの27%を利用してガソリンの代替燃料を製造するとしている。これにより06年秋以降、トウモロコシ価格は2倍に跳ね上がった。ある業界関係者は「先進国の自動車と貧困国の国民とが穀物を奪い合っている状況だ」と話す。
世界5位の小麦輸出国であるロシアは、07年に10%の輸出関税を設定し、08年には税率を40%に引き上げた。ロシアと世界4位のアルゼンチンはいずれも、穀物の輸出関税をたびたび引き上げるのは、価格上昇幅が関税引き上げ幅を上回っているためと説明し、そこで政府が抑制に努力したとしても、穀物輸出は引き続き増加するとの見通しを示している。
07年末から08年初頭の半月間に、中国政府は3つの禁止令を打ち出した。12月18日に穀物と粉製品に対する13%の輸出増値税(付加価値税)還付を取り消すと発表し、同30日に穀物・穀物製品に輸出関税を課税すると発表し、翌年1月1日に穀物・粉製品に対して輸出割当管理許可証制度を実施すると発表した。中国のこうした措置の影響を最も強く受ける国は、韓国、インドネシア、マレーシアなどで、いずれも中国にとって最大の小麦・小麦粉輸出国だ。
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