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▽10年後の今、かつての情景が再現
2008年の金融危機は、リーマン・ブラザーズの経営破綻を発端としたウォール街の混乱が世界に波及したものだ。1998年9月に起きたロングタームキャピタルマネジメント(LTCM)の経営破綻は、証券会社や銀行に大きな影響を与えたが、当時はそれほど注目されなかった。
10年前には銀行の規模が小さく、多様化が十分でなかったため、大規模なダメージへの抵抗力が弱かった。銀行の資金貸付業務の質が低下したことから、関連リスクへの懸念が生じた。互換ツール(投資家の資産交換やキャッシュフローの影響のことで、銀行資金の流動性を示す)の金利差が拡大し、金融企業は許容量を上回る資金調達圧力にさらされることになった。資金の流動性が危機的に高まる中で、資産価値が大幅に目減りし始めた。危機の最終局面では、資産価値の暴落が異常なレベルにまで達した。当時の投資銀行の株式の動きをみると、市場の混乱ぶりが非常によくわかる。株価はわずか数週間で一気に値下がりし、時価総額が大幅に減少した。金利差の拡大は、銀行資金の流動性の低下を物語っていた。
10年後の現在、同じような状況が再び出現している。ある業界関係者がいうように、米国のサブプライムローン市場への信頼崩壊とLTCMの破綻との相違は、サブプライム市場はより規模が大きく、より多様化していることにある。サブプライム市場ではリスク管理に巨額な資金が投入され、銀行は潜在的な貸付リスクの多くを投資家になすりつけている。
金融業のほか、不動産業に与えた影響も昔と今とでよく似ている。経済年鑑をみると、1998年に東南アジアのビル価格が大暴落し、アジア金融危機が不動産業界を席巻した。中国は直接の影響を被らなかったが、内需の不足や消費の不振は避けられず、危機の影響を回避するために、国は不動産業を国民経済の発展に向けた基幹産業に据え、改革に乗り出した。98年6月に全国都市部住宅制度改革・住宅建設業務会議は国発23号文書を交付し、福祉住宅の廃止と住宅の商品化・私有化を軸とした住宅制度改革をスタートさせた。この後、中国の不動産価格は上昇の一途をたどることになる。
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