中国は米国債に見切りをつけたわけではない
まず昨年12月のデータを見ると、中国が保有する短期国債は大幅に減少しているが、長期国債の購入額が増加している。12月、中国の米短期国債保有高は388億米ドル減で、長期国債保有高は46億米ドル増となっている。中国社会科学院(社会科学アカデミー)世界経済・政治研究所の国際金融研究室の張明副主任によると、2009年において、中国投資者の米短期国債保有高は955億米ドル減となり、米長期国債保有高は1,235億米ドル増となっている。これは中国人投資者が米国債の安全性に対し何の不安も抱いていないことの表れである。米長期国債を保有する理由として以下が挙げられている:米ドルの利上げ前倒しはありえないと思われていること、米ドルレートが基本的に安定を維持すると思われていること、米国債の信用格付けがなおもランク最高位の「AAA」であること、また短期国債よりも高いリターンを求めるため、である。米誌ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)の報道によると、2009年5月から12月まで、中国の米短期国債保有高は1,407億米ドルに減少し、減少率は67%となった。この原因の多くは、国債が償還期限に至ったことによるものであって、見切売りされたものではない。期限が一年以上の米国債に対する中国人投資者による購入はなおも引き続き行われている。
また、張明副主任は、米財務省が月別に発表している中国の米国債保有高データは、中国人投資者による米国債保有高の最終的かつ実際のデータではない、と指摘している。中国人投資者は中国金融機搆を通じて米国債を直接取引きするほか、海外の金融市場(例:ロンドンや香港)における金融機構を通じて、間接的に米国債を取引きしている。これは、中国人投資者の米国債保有高および米ドル資産の規模が、米財務省が現在月別に公開している直接購入額のデータを明らかに上回っている可能性があることを表している。TICのデータによると、2009年12月、香港の米国債保有高は1,529億米ドルに増加しており、2008年12月の772億米ドルをはるかに上回っている。英国の米国債保有高も3,025億米ドルに急上昇している。2009年10月時点で、2,301億米ドルに過ぎなかったにも関わらず、だ。
また、米誌ウォールストリートジャーナルによると、12月の中国の米国債保有高の減少はおそらく通常的なものであり、TICのデータを過度に重視することのないよう警告している。TICの月別データはしばしば変動が大きく、また取引価格の偏差の影響を受けやすい。キャピタル・エコノミクス社(Capital Economics)のジュリアン・ジェサップ氏は「中国人の投資は今一休みの段階にあるだけだ。しばらくすればまた米国債の購入を始めるだろうと述べている」と述べている。
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