米国の経済誌『ビジネスウィーク』の公式サイトに5月10日「中国はまだ超大国ではない」という記事が掲載された。筆者は中国市場研究グループ(CMR)のショーン・レイン代表である。当記事の概要を以下に示す。
「中国はなお脆弱な国である」との考えは愚かだ
年月が過ぎたのちに、2010年の4月から5月に起こったことを歴史学者が振り返るとき、長期的な影響力の最も大きかった出来事は何だったと認識されるのだろう。ゴールドマンサックスに対する米証券取引委員会の一連の措置だろうか。アイスランドの火山活動が航空にもたらした世界的影響だろうか。あるいは、デラウェア州相当の面積の原油流出帯域がメキシコ湾沿岸に向かって拡散したことだろうか――。こういった注目を集めた出来事を差し置いて、歴史学者が重要視するだろう出来事が他にある。中国がベネズエラに200億ドルの融資を行い、米国の同盟国であるコロンビアに第二の貿易相手国としての地位が確認されこと、そして世界銀行の4.42%の議決権を手にし、米国・日本に次ぐ第三の世界銀行出資国となったことである。なお、米国と日本の世界銀行における出資率はそれぞれ15.85%、6.84%である。
世界のどの地域に住むにせよ、どの業界で仕事をするにせよ、中国の台頭を無視するわけにはいかない。中国は国外での投資や買い入れを続けていることによってアフガニスタンやオーストラリアなどの天然資源を手に入れ、世界への影響力を高めている。確かに、中国はまだ貧困層が多く、医療や社会保障体制において他国に劣る部分がいまだ多い。多くのアナリストは愚かにも、こういった貧困や社会制度の不備を論拠に、また複数の地域から随時攻撃できるだけの軍事力を持たないことをも引き合いに出して、中国は実際には脆弱な国であり政治や経済体制は崩壊する可能性があると指摘している。
彼らは重要な点を見逃している。中国が昨年米国に代わり日本とブラジルの最大貿易相手国となった(当時すでにアフリカと中東の最大貿易相手国となっていた)際に、その一部の国が金融危機を脱するよう手助けをしたことで、経済的困窮に陥っていた米国よりも大きな影響力を発揮したのである。