中国は経済問題のみに注目していてはならない
中国の台頭により、超大国について定義することが重要になっている。超大国になるための資格を考えるとき、地球を破滅させるに足る原子爆弾を投下できるかどうかは既にその条件ではない。経済力や、ネットと金融によって世界を動かす力こそが、超大国の新定義であろう。
重要なのは、中国がどのような超大国になるかということである。ピューリサーチセンター発表のデータがはっきり示しているように、中国人の86%が自国政府を支持している。しかし同時に、他国に及ばない部分が中国にあることも明らかである。通貨政策で、『ニューヨークタイムズ』のコラムニストであるポール・クルーグマンや、ニューヨーク州の民主党上院議員のチャールズ・シューマーから批判されていることや、リオ・ティントの前中国現地幹部の胡士泰氏を逮捕したことで世界から非難されたことから、中国は自らのソフトパワーを高めることが急務となっていることが示された。孔子学院の設立や百花繚乱の中国雑伎団が人々に希望を与えているが、それに留まらず、より多岐にわたって自国の国際ブランドを推し進めていく必要がある。
中国が国力を高め、それを長期的に維持するためには、大口商品を手に入れることだけに注力していてはならない。その他の多くの経済体に大きな傷を負わせた今回の金融危機で打撃を受けなかったからということで力をつけた超大国ではなく、活力のある恒久的な超大国になるまで、中国はブランド確立のみならず、教育制度の不備を解消することも必要となる。
中国は以前から一流の技術者の養成に努めていると一般には考えられている。しかし、多国籍企業で貢献できるような人材を輩出するには、中国の教育制度はまだ不十分であるというのが現状である。中国のエリートのおおかたが米国に行き、ハーバード大学やスタンフォード大学で高等教育を受けるのは、国内では必要な教育を受けることが難しいからである。
大学卒業生が10年前の年100万人から600万人に増えている一方で、在中の外国企業は、即戦力を期待できる才知と技能を備えた中国人を雇用できないことを懸念している。これが中国の教育制度が立ち後れていることを示す証拠の一つである。在中の多国籍企業数百社に対して当社が行った調査の結果から分かるように、この懸念は多国籍企業の腐敗や日々増す保護主義への懸念を上回っている。13億の人口を擁する国において才能のある人材を探すことは、本来それほど難しいことではないはずなのだ。