保障制度を改革すれば欧州でなくなってしまう?
欧州諸国における数多くの国で、右派政党が総選挙で勝利を収めているのは事実である。だが、総選挙の過程をよく見てみると「右派」の勝利といっても、多くが接戦を強いられた結果であったことが分かる。欧州の国民の多くが、今の社会保障制度を引き続き維持することを望んでいる。しかも、それは低額所得者や失業者といった社会的弱者だけが主張しているのではなく、各界の中心人物らの中からも、改革派と対立する立場から発言することが多い。
ストックホルム大学の経済学者・ニルソン教授は「欧州経済の成長鈍化の原因は決して現行の社会保障制度のせいではない。逆の観点から述べると、欧州各国の社会保障制度があったからこそ、第二次世界大戦後60年以上もの間、安定した社会を維持することができたのであり、経済の持続的な発展を保証してくれたのである」と述べている。ニルソン教授によると、スウェーデンの高税率、高福祉の政策はすでに長く実施されているが、スウェーデンが今日まで世界の最先進国の一つになっていることは紛れもない事実である。また、EU諸国内でも経済成長が最も進んでいる国の一つでもある。ニルソン教授は、スウェーデンの恵まれた社会保障に依存する人は確かに一部存在することを認めている。だが、それよりも沢山の人々が、恵まれた社会保障の下で、研究開発事業を興したり、投資市場に参入したりと、大胆な行動を起こしている。なぜなら、それらの事業がすべて失敗してしまったとしても、これらの人々が日々の生活を維持することすら出来ないような収入レベルになることはあり得ないからである。
ニルソン教授はまた、スウェーデンの社会保障制度は、多くの国が模範としており、欧州諸国内でも、これほどの保障体系は欧州の現代の象徴の一つとされている。改革によりこれが変わってしまえば、欧州はもう欧州ではなくなってしまう。
ニルソン教授は取材に対し、「アジアの国の多くが経済高成長期にあるが、今のところはまだ富裕国とは言えない。これらの国の発展がある一定のラインまで達すれば、必然的に税制改革を行い、貧富の差を広げないように対策をたて、社会保障システムを構築し、経済の効率性から公平性へと転換するはずである。すでにそのように着手している国もある」と述べている。また米国は経済成長を遂げているが、それは経済以外の要素が多くある。例えば、第二次世界大戦中、米国経済は弱まるどころか逆に強大化し、それから世界規模の「米ドル支配」が確立した。これは今日に至っても米国経済が享受する恩恵の源となっている。また、米国は自由経済を始終提唱し続けているが、だからといって社会保障システムの構築を重視していないわけではない。
ニルソン教授曰く、欧州は社会保障制度を維持すべきである。そうすることが欧州経済の発展を促すことになる。各国政府はテクノロジーの研究開発、貿易自由化の推進における奨励性政策を進めるべきである。そうすることが、欧州経済の発展への正しい道であるからである。