▽人民元切り上げによる結末は日本より悲惨
「経済戦争は勇気だけではダメだが、勇気がなくてはまったく太刀打ちできない!」。これは正面からの戦いを叫ぶ中国の学者の声だ。米国の意図が益々明白になるにつれ、人民元の5%切り上げを呼びかける声がある。
オーストラリア・ニュージーランド銀行中国区の劉利剛チーフエコノミストは、輸入の需要が高いうちに、人民元を小幅に切り上げればインフレ緩和の良策になり、貿易バランスを取る手助けにもなると指摘する。「今回の摩擦はこれまでと違い、米国の人民元切り上げ圧力への決意は固いようだ。目的を果たさないうちはあの手この手で圧力をかけてくるだろう。中国は逃げられない。制約と反制約を取るしか手はない」と劉氏は語る。
孫氏は、「貿易戦争は両者共に傷を負うことになるが、かといって譲歩は上策ではないとの見方を示す。人民元が切り上げられれば、中国の結末は日本よりさらに悲惨なものとなる。中国国内の消費力低下、産業構造調整のペースダウン、日韓の親米政策が米国が勝つ前提となっているが、米国が自らの意見を通すなら中国も受けて立つしかない。中国は、産業構造調整を進める時間さえ稼げれば米国の無礼な要求に対抗できる」という考えだ。
▽アジアと米国の複雑な心境
孫氏によると、人民元切り上げ問題に対する、日韓を含む多くのアジア諸国の心境は複雑だ。ベトナム、シンガポール、日本、韓国などは米国側につくが、これらの国の経済は中国経済から恩恵を受けている。中国経済が日本と同じ末路をたどれば、アジアや欧州のどの国も巻き添えとなり、市場の混乱は免れない。
米国国内でも経済学者や企業家の多くがこのことを懸念している。オバマ政権の経済回復顧問委員会のメンバー、ローラ・デアンドリア・タイソン博士は、「中国の輸出回復がちょうど米国の高失業率と重なり、米国の神経を刺激したことは言うまでもない」とし、「貿易戦争は今後5年で輸出倍増を目標に掲げるオバマ政府にとって不利であると同時に、中国が保有する米国債が売り出されれば、低利率の連邦準備貯金は二進も三進もいかなくなり、米国は大幅な利率切り上げを余儀なくされ、ドルは急落、さらには再び国際金融市場の混乱を招く」と言及する。
「人民網日本語版」2010年9月27日