日本の政策担当者は自国の競争力が減じられることを受け入れたが、それは彼らが温厚だったからではなく、逆に自信に満ちていたからである。
つまり、日本経済はどのような不況も難なく乗り越えられると彼らは信じていた。実際その判断は正しく、1986年の後退局面は長く続かず、大きな影響もなかった。
貿易相手国が日本の最も成功した企業に割当額を次々に設定してくれる状況にあって、強い日本円は使える武器になると考えたのである。
この考えもやはり正しいと言える。日本円が強ければ、日本の自動車メーカーは欧米の重要な市場において、生産力を徐々に高めていくことができるのだから。
また、日本経済は輸出主体から消費主体へと転換するべき時期を迎えており、日本円の上昇は日本国内の家庭の購買力を増すことになるとも彼らは考えていた。しかし、この考えは外れていた。