国家であっても、あるいは何らかの団体であっても、まずは世界の不確定性や複雑性を認識し、そのさまざまな変化に柔軟に対応することで不確定要素のマイナス面をやわらげ、さらにはそれを有益・改善・積極性・創造性など意味のある方向へと導いていかなくてはならないのである。
明らかにいま、日本はそういった「不可思議」で複雑な局面を迎えている。かつて、アメリカ的な方法で国家的失敗を改め、正しく統治する道を模索したこともある。「市場原理に基づいた」いわゆる「第2の道」で荒治療をしてみたこともある。しかし、まさに菅直人氏が言うように、これらの施策は局部的に見れば効率的に見えるかもしれないが、大局的にはそうではない。「企業なら社員の切り捨てで効率を回復できることもあろうが、国家は国民を切り捨てて経済を回復したりはできない」のであって、その場しのぎの診療は病状を重くする結果になりかねない。
「事象への対策」ではなく「根本原因への対策」という考え方で日本の情勢を分析すると、日本という国家の将来は、社会と民衆が複雑きわまる政治経済体制を運用できるかにかかっている。さらに言うならば、これからの変化と危機に対応できる、「危機を好機に変えられる」柔軟な体制を作り上げられるかにかかっている。菅直人氏の臨機応変なやり方は疑いなく、この先行きの見えない時代に必要とされるものである。彼が表舞台にのぼったタイミングもぴったりだった。