第四に、菅直人のマニフェストには「危機を好機に」という政策の用意があることが盛り込まれている。そこでは「第三の道」を政策とすることを提案しており、この政策の目標は、困窮した経済と社会の問題を新たな需要と雇用をもたらす機会に転化することによって、新しい経済成長モデルを実現することである。このために、新内閣は強い政治的指導力を持ち、「強靱な経済」「穏健な公共財政」「有力な社会保障体制」を系統的かつ完全なものとして実現しなくてはならないと同氏は考えている。
一方で、政府機関や公務員に頼るだけでは、かつて人々が享受した社会サービスを提供することはかなわないと菅氏は素直に認めている。したがって、教育、子育て、地域社会の構築、犯罪と災害の予防、医療福祉や消費者保護といった活動に、地元住民が広くボランティア精神に基づいて参与してもらうことが必要だと呼びかけている。この背景にある意図は、政策を正しく実行することで地域の自治機能を活性化し、それによって、地域の様々な出来事に対して地域主体がとなって柔軟に対応する体制を作り、より大きな社会的公益を生み出すということである。
総じて言えば、異色の職歴など菅直人氏に有利な機縁や「兆候」はたくさんあるものの、旧体制と慣例からの「政変者」排斥反応は軽視できず、前任の首相数人がたどった「短命内閣」という宿命を脱することができるのか、知るすべはない。ただ、菅直人という首相自身の運命がどうなるのかは別にして、もしも日本が20年におよぶ苦境を脱することができることになれば、それは菅直人氏やその後続の人間がついに、強力かつ柔軟性を持った「革命」の軌道に日本という国を乗せたということに他ならないだろう。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年11月9日