「官制債権国」から「個人債権国」へ
対外投資の主体が準備資産と国による貸付であれば「官制債権国」であり、直接投資や個人的な証券投資及びその他の投資であれば「個人債権国」といえる。この定義からみると、中国は典型的な「官制債権国」であり、巨額の外貨準備の管理には非常に大きなリスク集中問題が存在する。一方、同じように巨額の外貨準備を保有している日本は、「個人債権国」に属する。「官制債権国」から「個人債権国」へと転換した日本の経験は、参考にするに値するものと思われる。
日本政府は80年代から「個人債権大国」への転換を推進し始めた。80年には『外国為替法』を改正。外貨預金を自由化し、自由な為替取引を許可した。05年には「貿易立国」から「投資立国」への転換を打ち出し、国による対外投資から民間による投資へと徐々に移行させた。投資項目には対外直接投資や国外の株券・債券等金融商品の購入が含まれ、民間の外貨準備投資のルートも多様になっている。これらの措置によって、外貨準備の保有者は多様化し、外貨資金の使用ルートも拡大し、リスクを低減している。
中国も06年に呉暁霊・中央銀行副総裁が官制から個人への転換を提起して以来、外貨使用に関する新措置が打ち出され、外貨準備の使用制限は少しずつ緩和されている。07年2月、国家外為管理局は『個人外貨管理弁法』を公布し、個人の外貨購入の上限を年間2万ドルから5万ドルへと引き上げ、外貨運用の空間と利便性を拡大した。07年8月には、天津浜海新区をテスト地に指定して、個人による香港市場への直接投資を許可し、個人の海外証券直接投資の門を開いた。同年8月13日には、『国内機関の経常項目における外貨収入の自己保留に関する通知』を公布して、国内機関が経営の必要に応じてその経常項目における外貨収入を自己保留することを許可した。こうした政策は、中国がすでに「個人債権国」への転換を進めていることを物語っている。