リスクの分散がリスクを生む
地震発生前の2011年2月、トヨタはリスクを分散させるべく、重要な生産工場を宮城県大衡村に建設した。
愛知県豊田市はトヨタ自動車第一の生産基地である。トヨタはこれまでずっと日本の資源全てを活かせる生産システムを確立しようと試みてきた。トヨタのハイブリッド車の重要な部品工場が東北地方に建設された後、ハイブリッド車用バッテリーも宮城県で生産することが決定され、2010年1月から生産が開始された。地震と津波がこの工場を襲うとは、誰が予想できただろうか?
3月14日より、トヨタは操業停止。そして、このニュースを世界にむけて発表した。
操業停止から10日後の24日、なんとか調達した部品はプリウスなど人気車種にのみ使用することができる量だった。3月28日にプリウスの組み立てが再開されたが、今後生産を継続できるかどうかは保証されていなかった。バッテリーを生産する宮城工場が正式に操業を再開するにはまだ時間が必要だという。
「新潟県の地震の時のように、ただちに修理、生産設備の調整を行い、生産を再開させるのは非常に困難である」。トヨタ(中国)有限公司は中国新聞周刊の取材でこう述べた。
トヨタだけでなく、日産も同じく震災後、操業停止に追い込まれた。東北地区の部品工場は、できる限り海から離れた場所に建設するように決められていたが、地震と内陸に向かって5キロまで及んだ津波が多くの工場に損失を与えた。その結果、トヨタ、日産、ホンダなど日本の大手自動車メーカーの部品工場が犠牲となった。また、その影響で、トヨタなどの海外の工場もかなり大きな影響を受けた。
「操業を停止する可能性がある」。3月23日、トヨタの北米工場にこのよな告知があった。
元々、東北地方に工場を設けることで、生産システムが東京、大阪、福岡などに集中するのを回避しようという狙いがあった。しかし、東北地方を襲った天災により、リスク分散が更なるリスクを生んでしまった。一部の地域の工場がグループ全て、あるいは産業すべての部品を調達するという方式は、今回の地震により莫大な被害を生むこととなった。