中国浙江省温州市で23日夜起きた高速列車の追突・脱線事故により、中国鉄道部の信用は底に落ちた。だがそれ以上に、同部の財政問題がいま証券市場の注目を集めている。証券会社数社がこのほど中国鉄道部の財政状況に関する報告書を発表した。中国の証券大手「広発証券」が26日発表した最新の報告書に基づくと、現在建設中の高速鉄道の路線は完成までに8491億元(約10兆2000億円)を要する計算になる。操業をすでに始めている路線に投じられた資金は約6000億元(約7兆2000億円)という。中国のタブロイド紙「新京報」が報じた。
▽事故により融資引き下げも
中国政府は2008年に4兆元(約48億円)の投資計画を打ち出して、高速鉄道の建設を本格的に進めてきた。「広発証券」の同報告書によると、すでに操業を始めているのは京濾線(北京-上海間)、武広線(武漢-広州間)、甬台温(寧波-台州-温州)など13路線で、総額5898億元の資金が投じられた。現在建設中の路線には、寧杭線(寧波-杭州間)、京石線(北京-石家荘)、哈大線(ハルビン‐大連間)など26路線があり、完成までにさらに8491億元の投資が必要だという。さらに深港線(シンセン-香港間)、京瀋線(北京-瀋陽間)、徐鄭線(徐州-鄭州間)など23路線の建設も予定されている。
現在未完成のものに加え、手のつけられていない路線も多くあり、高速鉄道建設プロジェクトの完成までにはさらに巨額の資金投資が必要になる。中国鉄道部は以前に、2011年の投資額を7455億元(約9兆円)と定め、うち6000億元(約7兆2000億円)を基本建設に充てるとした。鉄道部は、資金は確保されており、減額はありえないと何度も強調しているが、業界関係者の間では懸念する声が広がっている。