林国本
発展途上国に生活基盤を置きながら、国際ジャーナリズムの世界で暮らしていると、どうしても中国の現状と外国の状況を比較する「複眼構造」みたいなものが身についてしまうが、この場合あくまでも中国の現実に立脚して物事を考えるのが正しい方途であると思っている。そういう思考パターンのもとで私は日本に長期滞在していた頃に、日本のいろいろな分野と中国の現状を比較しながら、経済大国となった日本に存在するいろいろなシステムがいつ頃になれば中国でも目にすることができるようになるか考えていた。
その中に「宅急便」という物流の一種というか、それも市民の生活に密着したものに特に注目していた。しかし、中国でこういう業種が現れるには、まず高速道路網の完備とコンピューターネットワークの構築を待たなければならない、と考えていた。そして、いまや中国はかなり完備した高速道路網ができ、コンピューターのネットワーク化もすすんでいる時期に入っており、私の予想していたとおり「宅急便」のような業種も現れてきた。
当初、このような業種のネーミングについていろいろな案があったらしいが、初めの頃は「宅急送」とかいう名称がつけられていたが、どうも外来語の匂いがして、一般市民にはなじめなかったのか、最近は「快逓」、つまり「速達便」に近いネーミングが使われるようになっている。私の住んでいるところにそのデポみたいなものがあり、わが家でも時々利用しているが、一応日本の「宅急便」と同じようなシステムとなっているような気がする。