中国の移動通信の契約数は4億件をすでに突破し、2012年にはパソコンを通じた従来型のインターネット通信を上回るとみられる。こうした移動通信の普及に伴い、無線都市という概念も生まれた。2010年10月から現在で、中国の通信大手「中国移動」は全国26省、161都市と無線都市の構築に関する提携契約を結んでおり、年内にも1600万世帯が無線都市の対応地域に含まれる見込みだ。こうした中、同じく通信大手の「中国聯通」、「中国電信」も各地で縄張り争いを繰り広げている。
▽生活の利便化と情報格差の縮小
無線都市とは、各種の無線通信技術を利用して、無線ネットワークに場所、時間を問わず全域で接続可能な都市をいい、従来型インターネット通信の仕組みを携帯電話に応用したもの。ブロードバンド無線都市の構築は、第12次五カ年計画(以下「十二五」、2011-15年)の綱要にもすでに盛り込まれており、各国でも無線都市の構築は水、電気、ガス、道路に次ぐ5番目の都市公共インフラと考えられている。
中国移動(北京)の展示フロアを訪れ、サービスを実際に体験してみたところ、携帯端末で北京市民向けのホームページにアクセスするだけで、公共バスや社会保険、公共積立金など10項目余りについていつでもどこでも問い合わせることができた。同社が開発したシステムと対応機種を利用すれば、遠隔医療を受けることも可能。携帯電話の金属片を握ると、心電図が指定の病院に自動送信され、医者からのアドバイスがすぐに得られる仕組みだ。
中国移動の李躍総裁は、無線都市の構築に向けて政府と協力し、現地の資源を活かした特色豊かな無線都市づくりに取り組み、住民のためのサービスを多く提供していくと説明。今度の展開に向けた重点目標として行政、公共事業、交通、医療、教育、就業、金融、旅行、生活サービス、ショッピングの10分野、50項目をすでに打ち出したという。
移動情報化は生活の利便化だけでなく、産業の最適化・高度化や都市・農村間の情報格差(デジタルディバイド)の縮小にもつながる。中国移動珠海支社の徐剛社長は「従来型インターネットは、利用者と非利用者の間で情報の収集能力に大きな差が生じる『デジタルディバイド』がある程度存在していた」とし、「携帯をほぼ1人1台持つようになり、無線通信の契約件数は従来型インターネットをはるかに超えた。無線通信の普及により、人々の情報収集力が均等化しつつある」と指摘した。