1万人の削減は、平井氏の持つ「武士道精神」の表れともいえる。リストラは士気の低下を招く。同時に注意すべきなのは、良い人材も悪い人材も一緒くたに流出してしまうことである。優秀な社員を派閥抗争の犠牲にしてはならない。
社内をかき回し、不安に陥れること以外にも、平井氏が調整すべき任務がある。平井氏は就任時、競争力のない分野は躊躇なく撤退すると述べた。今回の大規模リストラ発表が、同氏の意気込みを物語っている。
ゲームおよびエンタテイメントは撤退リストに入っていない。今のソニーにとっては利益となっている部門だからである。
大きな赤字となっているのはテレビと携帯電話だ。撤退リストに入る可能性が最も高い。しかしテレビはソニーを世界的にした部門である。彼らにとっては「腐っても鯛」であり、欠かすことのできない分野である。もしテレビ部門を撤退すれば、ソニーはソニーでなくなってしまう。平井氏が自らの地位をしっかりとしたものとするためには、テレビ部門を再建しなければならない。平井氏はCEO就任後も依然として危機に陥ったテレビ部門を直接管理している。つまりテレビは依然として、ソニーの重要部門なのである。