米紙「ニューヨークタイムズ」のサイトに掲載された5月1日の記事:「対中国貿易不均衡の消失」
アメリカの政策決定者にとってこの数年、中国の経済的不均衡は懸念問題だった。対中貿易赤字が米中両国の重大な問題であり続けていたのである。しかし突如として中国経済に変化が生じ、貿易の不均衡が消失した。
中国の経常黒字が急激に縮小している。昨年、中国のGNPに占める経常黒字は、2007年の10%以上から2.8%前後に減少した。このことは、中国の経済戦略が分岐点を迎えたことを示唆している。昨年中国は、アメリカに対しては貿易黒字が3180億ドルに達したものの、世界各地で巨額の貿易赤字が生じている。世界的な市場からみれば、中国はすでに勢いが衰えてきているのかもしれない。中国の労働コストおよび輸送コストの上昇は、アメリカの企業のグローバルな生産ラインに再構築を促している。他国へ生産拠点を移すということだ。人民元の上昇幅も、見た目以上に影響がある。もし人民元が上昇を続ければ、中国の貿易黒字は縮小を続けるだろうとIMFは指摘する。
とはいえ、中国の新しい発展戦略がスタートしたと断言するには時期尚早だ。貿易黒字縮小の大きな要因は、中国の主要輸出国である欧米が世界的な不況をもたらしたことによる需要の減少である。これに対する中国の処方箋は大規模インフラ投資と銀行の金融緩和だったが、それが輸入を大幅に拡大させることになったのだ。