周牧之:東方は暗くとも西方は明るい

周牧之:東方は暗くとも西方は明るい。

タグ: ソニー 日本家電 周牧之 東京経済大学 

発信時間: 2012-05-17 11:39:09 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

東京経済大学教授 周牧之

 

長期的な業績悪化と2200億円に上る巨額損失により、ソニーのハワード・ストリンガー氏は2012年2月1日、社長兼最高経営責任者(CEO)の職務を退くと発表した。パナソニックとシャープもこの例に漏れず、2012年3月期決算がそれぞれ7800億円、2900億円という空前の赤字を記録した。日本家電王国の覇者たる三大メーカーの苦境の深刻さが改めて浮き彫りにされた。

全世界で一世を風靡した日本の家電メーカーは、インターネット革命の列車に乗り遅れ、ネットサービス及び端末の開発競争でアップル、Google、アマゾンなどの米国勢力に敗北した。生産面でもまた、サムスン、Foxconnに代表されるアジア新興企業に抑えられ、四面楚歌と言ってもよい状態に陥った。

もっとも、幸いなことに時代は「 東方は暗くとも 西方は明るい(毛沢東が1936年の講演で述べた言葉。一方の状況が行き詰っても、他方の状況は良いことがあるとの喩え)」である。アニメ、音楽、映画、テレビ、小説など日本のコンテンツは幅広いファンを得、グローバルコンテンツ市場で10%前後のシェアを保っている。例えば全世界で放映中のアニメはその60%が日本で制作されたものである。なかでも「ポケットモンスター」の放映国・地域は68カ所にも及び、関連製品の累計消費総額は3兆円を超えている。輸出産業になって久しいゲームソフトの海外市場は7000億円に達している。音楽業界も近年業績を伸ばしており、AKB48,SMAP,嵐などのグループが海外で大変な人気を博している。

従来、日本の高度成長を支えてきた製造業は、バブルの崩壊により業績悪化の一途を辿った。相反して、コンテンツ産業は猛成長し、東京はファッション、芸術、娯楽、レジャー、グルメやショッピングの都となって人材が集結し、文化の発酵、発信の地となっている。

戦後、米国の生活と文化は日本人の憧れであった。映画、音楽、ファッションそして雑誌を通して、人々は米国の現代文化の断片を、余すことなく収集し味わった。ハリウッド映画、ジャズ、米国雑誌の日本版はことごとく流行した。

しかし経済的ゆとりと生活の質の向上、そして大都市の快適で多彩な生活モデルが確立するに伴い、日本人が米国式生活に盲目的な憧れを抱くことは無くなった。日本人の感性に訴える米国文化の力は次第に弱まった。

今日、ハリウッドの大作が日本ではあまり評判を呼ばない例もしばしば出てきた。例えば「バットマン ダークナイト」は全世界の興行収入が10億米ドルを超えたにも関わらず、世界第二の映画市場である日本では1500万米ドル止まりだった。

日本はすでに4年連続で邦画の興行収入が洋画のそれを超え、ハリウッド作品の世界市場における日本のシェアは従来の15%から今は半分に満たない7%にまで落ち込んだ。多くの米国雑誌の日本版も読者の激減により、相次いで廃刊を余儀なくされた。一時は発行部数70万を誇った雑誌『PLAYBOY日本版』もこの例にもれなかった。昨年、1300万の記録的な販売枚数で世界のCD王の座を勝ち取った英国歌手アデルのアルバム「21」も世界最大の音楽市場たる日本では5万枚を売ったに過ぎなかった。かつて若者であれば誰でも飛びついた欧米留学に至るや、志願者が激減している。

西洋文化への免疫力を付けた日本のコンテンツメーカーたちは、独特の感性を持った自前の作品を創り始めた。

日本の家電産業の優位性を失墜させたインターネット革命は、コンテンツ産業には世界に向けて広がる大舞台を提供した。とりわけiPodとiTunesが打ち立てた全く新しい音楽生活モデル、続くiPhoneとiPadによるゲーム、書籍、雑誌、音響に跨がる斬新なネット視聴モデルが登場した。YouTubeもコンテンツを世界へ自由発信するプラットホームを提供した。これらはすべてコンテンツ産業に、国境を超えた巨大市場空間を作り出した。

2011年に全世界で生産されたスマートフォンは4.7億台となり、初めてパソコンの台数を超えた。2015年に同スマートフォンの台数は11.7億台に達すると予測されている。コンテンツの鑑賞にマッチしたスマートフォンとタブレットPCは、すでにクラウド時代のネット端末の主力となっている。2015年にスマートフォンのアプリケーション・ソフトウエア市場は、現状の10倍の520億米ドルに達すると見られている。

今日のネットにおけるコンテンツ商品の流通は、依然として無料版あるいは海賊版が主流となっており製作側が相応の収益を得るまでには遠く及ばないものの、ネットは、コンテンツに国境を超えた認知と巨大な潜在市場とをもたらした。近い将来必ずクラウド機能の更なる進歩と新サービスの出現とにより、コンテンツのグローバルなネット交易と鑑賞とが爆発的に普及するだろう。

ネット革命の深化により、日本のアニメ、ゲーム、音楽は今まさに一大新興輸出産業となっている。14兆円規模の日本のコンテンツ産業で、ゲームと音楽のシェアは僅か9%、13%に過ぎず、出版と映画・TVは43%、34%と圧倒的シェアを持っている。しかし、出版も映画・TVもネット化の度合いはなお低く、輸出意識の希薄さと相まって、潜在的力量を発揮できないまま置かれている。日本のコンテンツ産業収入の海外比率はまだ4.3%に止まっており、米国の同17%に遠く及ばない。総じて、日本は優秀なコンテンツ作品とクリエイティブな人材を有しながら、産業としてのコンテンツを取り巻く環境がもの足りない段階に甘んじている。

ネット革命によって開かれた「知のグローバル化」の時代にあって、日本が必要とするのは、各国と手を携え、ウィンウィンの商業モデルを打ち立て、知識経済の新たな繁栄を目指すことである。

 

掲載誌:中国新華社『環球』雑誌2012年第4号

 

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年5月17日

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