高齢化も、中国の労働コスト上昇の大きな要因となっている。張茉楠氏は、中国の高齢化が急速に進んでいると指摘する。第6回人口センサスで老齢人口は全体の8.9%を占め、2050年には30%まで増加する。人口数が多いことから、このような急速な高齢化は世界でも類を見ないものとなる。高齢社会になると、労働適齢人口と農村からの労働力が減少する。2015年に労働供給はルイスの転換点を迎えるが、早くも2011年には労働力人口比率が初めて減少に転じた。
短期での欧米越えは不可能
中国の労働者の賃金は、本当に急激に上昇するのか。中国の労働力は優位性を保てるのか。専門家は、海外機関の予測が大げさすぎると指摘する。
徐洪才氏は、以下の理由から中国の末端労働者のコストが短期内に上昇することはあり得ないとしている。第一に、指標から見てアメリカの製造業労働者の平均賃金は中国の数倍にも上る。中国では、短期間でそこまで上昇することはあり得ない。第二に、供給面で見ると中国の農村部にはまだまだ豊富な労働力が存在している。最後に、多国籍企業が工場を移転させるには非常に多くの費用がかかるため、実行は容易でない。