輸出需要を安定させるためには、人民元の実質実効為替レートの安定を維持する必要がある。2012年に入ってから、人民元の対ドル相場の変動幅、或いは下落幅は比較的小さく、人民元の実効為替レートと米ドル指数は強気な動きを見せている。人民元の実効為替レートの上げ幅が8%を上回ったことを受け、米ドル指数は2011年に2008年8月以来の低水準を記録した。その後、回復に向かった米ドル指数の上げ幅は1年で10%以上となった。
中長期的に見て、米ドル指数が今後の人民元実質実効為替レートの動きを左右する要となる。しかしながら、現在の米ドル指数は尚も高水準を維持し続けている。アメリカの経済回復はある程度の減速が見られるものの、回復し続けていることに変わりはなく、経済が再生するとの期待も高まっている。アメリカの経済危機の元凶となった不動産市場は既に持ち直しており、不動産投資の伸びも上昇に転じている。また、レバレッジの規制の効果が徐々に表れ始めている。アメリカの住民部門や非金融企業、金融機関のレバレッジ比率にしても、アメリカ社会全体の負債がGDPに占める割合にしても、現時点では既に両方とも明らかに低下している。また、アメリカ経済がバランスを取り戻す動きは、予想していたよりも積極的であると見られる。これらの要素が、過去10年間の世界の資本の流れを徐々に変えるだろう。
米ドル指数が高水準を保てば、人民元は基本的にはドル強勢に追随している状況であるため、人民元の実質実効為替レートも高水準を維持し続けるだろう。ここ数日、人民元対ドル相場は小反落しているものの、米ドルが上昇し続けているため、他の主要通貨の対ドルでの下落が更に大きくなっていることで、人民元の他国通貨に対する上昇は依然顕著である。特に、人民元相場は主要新興国の通貨に対し、大幅に値上がりしており、中国の新興国との貿易の発展に不利になるだけでなく、中国の貿易における競争力にも圧力がかかる。