▽挑戦を受ける世界の工場・中国
投資して工場を建設するなら、まずどこへ行くか。発達した地域の製造業関係者にこうした質問をしたなら、過去10年間は中国という答が大半を占めていた。だが現在は東南アジアという答が返ってくる可能性がある。世界の工場としての中国の地位が今や挑戦にさらされているのだ。
中国からベトナムへ「転戦」したスポーツ用品ブランド・ナイキの例を挙げてみる。2000年には世界のナイキブランドの靴製品の40%が中国で製造されいたが、今ではベトナムが中国に代わって世界最大のナイキ製造国になっている。
国際連合(国連)貿易開発会議(UNCTAD)が発表した「2012年世界投資報告」によると、2011年に東南アジアに流入した海外からの直接投資は1170億ドルに達し、前年比26%増加した。同年の中国の増加率は8%に満たなかった。これまで中国に投入されていた外資がASEAN諸国に移転しただけでなく、中国東部地域の製造業にもASEANへの移転の動きがみられる。
中国社会科学院の陳佳貴・元副院長によると、中国は貿易大国であり、欧米の多くの国に対する貿易収支は長期にわたって黒字だった。貿易バランスの追求、人民元切り上げの要求、大統領選挙での票集めなどさまざまな思惑から、欧米諸国は往々にして中国を対象にした貿易摩擦を引き起こしたり、メードインチャイナを標的にした貿易障壁を設けたりしてきた。
だが欧米諸国は中国から輸入しないなら、別の地域から輸入しなければならない。製造業がASEANに移転したなら、中国はこのような貿易障壁を確実に避けられるようになる。