■反対の声
だがこれは安倍氏の楽観的な推測に過ぎないかもしれない。
これは安倍氏が首相に返り咲いてから放った「アベノミクス」の3本目の矢だとの指摘がある。最初の2本は財政出動の拡大と金融緩和策だ。
だがより懸念されるのは、TPPは徹底的な関税撤廃を標榜しているが、日本は国内産業保護の旗を掲げて交渉に参加しようとしており、これは日本に「アベノリスク」をもたらす可能性があるということだ。
日本がTPP交渉参加に意欲を示すのは最近始まったことではなく、早くも菅直人政権時には国内で焦点となっていた。支持者の大部分は商工業界の代表だ。自由貿易は工業製品の輸出を増やし、海外市場を拡大し、国内産業の空洞化を防ぐからだ。反対者の多くは農・畜産業の代表だ。安い農産物がどっと入り込めば、農家にとって致命的打撃となるからだ。現在日本は輸入米に778%、バターに360%、小麦に252%の関税を課している。
期待される経済効果については各方面で算出結果が異なる。内閣はGDPを押し上げると試算しているが、農林水産省は11兆6000億円の損失を生じ、約340万人が失業すると見ている。このため全国農業協同組合中央会は全国的なTPP反対運動を始めた。日本医師会はTPPに参加すれば日本の医療は「市場原理主義」に巻き込まれ、所得に応じて医療資源が配分されるようになり、最終的には国民皆保険制度の崩壊を招くと警告している。斎藤環氏、中野剛志氏、藤井聡氏、三橋貴明氏らの学者は「TPP参加は日本の国益を損なう」と考えている。