■本当に利益を得るのは誰か
安倍氏は決定を行うと同時に、その後の展望をすでに想像している。「日本はアジア太平洋地域の巨大な経済圏で主導的役割を発揮し、同盟国である米国と共にルールをつくる。日本は主役になるべきだ」。
だがこれも安倍氏の一方的な願望に過ぎないようだ。
安倍氏は日本がアジア太平洋経済を主導することを望んでいるが、米国もそうだろうか?
TPP調印による最大の勝者が米国であることを研究ははっきりと示している。日本が参加した場合、米日のGDPはTPP加盟国全体の91%に達する。オバマ大統領もTPP加盟によって輸出が11%伸びると見ている。このことから、オバマ政権がTPPを推進する目的が、これをてこにしてアジア太平洋地域全体の経済的主導権を掌握することにあることがわかる。
オバマ政権の通商担当高官は日本の交渉参加決定を歓迎する一方で、いくつかの重要な問題において日本は譲歩せざるを得ないだろうと示唆した。