日本の国内総生産(GDP)の実質成長率は第一四半期、前期比で0.9%に達したが、名目成長率は0.4%にとどまった。また物価の動きを示すGDPデフレーターは前期比マイナス0.5%となり、マイナス幅は前期から倍増し、デフレ圧力はまだ高いことを示した。さらに賃金も0.5%のマイナス成長 となっており、GDPの60% を占める個人消費を引き上げる材料は乏しい。輸出は3.8%の成長となったものの、これまで3期連続のゼロ成長もしくはマイナス成長の反動と考えられる。企業の設備投資は5期連続でマイナス成長となり、企業が経営困難を抜 け出しておらず、経済回復がまだ脆弱なものにとどまっていることがわかる。
貿易状況から見ると、4月には大幅な貿易黒字となったものの、それまで10カ月連続で貿易赤字を続けていたことを考えれ ば、これに対する反発と解釈できる。世界経済の下降と生産コストの上昇により、企業の輸出力は低下している。大型金融緩和政策の実施後、 大幅な円安が人工的に作り出され、対ドルレートは半年で27%下がった。円安は 輸出を促進したが、輸入コストも高めた。輸入数と販売価格が変わらないとすれば、円安による輸入損失は輸出拡大の効果を上回る可能性もある。日本は、自らが作り出した苦境に入り込みつつある。