庶民の暮らしにかかわることに小さな事はない。1億2千万人以上の日本人が対象となる年金は中でも、日本の庶民の生活や政府の財政収支の安定を大きく左右するものだ。年金基金の価値の維持や拡大の重要性は明らかである。
だが日本の年金は、保守的すぎる管理体制と投資行為によって投資での失敗を重ねてきた。資本市場から逸脱した実業投資「財政投融資計画」は、巨額の不良債権と損失によって幕を閉じた。資本市場では、株式市場での資産拡大のチャンスを2回も逸している。資産配置の不合理は、債券市場の「ブラックスワン現象」に遭遇する可能性を高めている。
財政投融資計画は80年代以降、投資を様々な分野へと拡大し、その規模は日増しに膨らんでいた。日本経済が「失われた十年」に入ると、「財政投融資計画」の弊害が現れ始めた。推算によると、「財政投融資計画」の総資産に占める不良債権の比率は2000年末までに75%、金額は約78兆円に達した。このうち公的年金の投資損失は20兆円にのぼるとされる。