まず、600兆円という数字目標はハードルが高すぎて現実的ではないと指摘されている。日本内閣府の試算では、実質ベースで年間2%、名目ベースで年間3%以上の成長を維持した場合、日本の名義GDPは20年度に594兆円に達し、21年度にやっと616兆円に到達する。
しかし、足元の日本の経済情勢はまったく違う状況だ。今年第2四半期の名目GDPは年率換算で499兆円程度に過ぎず、安倍氏の目標まで100兆円の差が開いている。第2次安倍政権が発足した12年度第4四半期以来、2年半でGDPは27兆円増加した。それもほとんどが消費増税や円安にともなう物価上昇の影響によるもの。物価変動要因を除けば、実質GDPは11兆円の増加にとどまっている。
安倍氏の最新目標の達成には、日本は名義GDPの比較的高い成長を実現しなければならない。しかし、直近で最後に名義GDP成長率が3%を超えたのはバブル経済末期の1991年だ。今年第2四半期の実質GDP成長率はマイナス1.2%まで落ち込んでいる。日本銀行は4月時点で今年の経済成長率が2%と予測していたが、7月に小幅下方修正。それでも、かなり楽観的な見通しだ。国際通貨基金(IMF)が7月に発表した日本のGDP予想成長率はわずか0.8%。IMFの関係者は予測をさらに引き下げる可能性も示唆している。デフレ脱却を目指し、日銀が掲げている2%の物価上昇目標も実現が遠のいている。8月の消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除いたコアベースでマイナスに転じ、0.1%下落した。