中韓自由貿易協定(FTA)は2012年5月に交渉が始まった。両国は14回の交渉会合を経て、2014年11月に交渉妥結、2015年6月1日に正式署名した。規定によれば、中韓FTAは発効後20年間を移行期間とする。移行期間中にゼロ関税を実現する製品については、韓国側が税目の92.2%、輸入額の91.2%を、中国側は税目の90.7%、輸入額の85%を対象とする。農林水産物をはじめとするセンシティブ品目のうち、30%が関税の減免対象から外れた。16%が関税割当額の管理対象とされ、14%については関税が撤廃される。これにより、中韓両国の貿易は、ほぼ「ゼロ関税時代」に突入することになる。
貨物貿易について見ると、中国、米国、EU、日本が世界の貿易額上位4カ国とされているが、それぞれの間で自由貿易協定(FTA)が結ばれているわけではない。世界最大の貿易国である中国と第9位の韓国がFTAを締結すれば、極めて高い水準の協力関係が繰り広げられるだけでなく、中国がこれまでに締結してきたなかで対象範囲が最も広く、貿易額が最大のFTAとなる見込み。中韓FTAは2国間貿易にとどまらず、地域全体の繁栄と発展に向けた大きな推進力となる。両国の国家と国民に実益をもたらし、大きな意義を持つものとなる。
中国にとって、中韓FTAの地域経済に関する戦略的意義は、直接的な経済効果を大きく上回る可能性がある。中韓両国にはこれまで「経済貿易関係は政治関係を超える」という説があった。中韓両国の経済貿易関係は密接だが、政治・安全保障の分野については相対的に提携交流が進んでいないということだ。しかし経済貿易関係が緊密になるに従い、中韓両国はすでに政治・安保などの分野でも協力を強化しつつある。中韓両国の貿易額はすでに韓国の対外貿易額全体の4分の1を上回っており、韓国-米国、韓国―日本、韓国-EU間の貿易額全体をも上回る。中韓FTAが発効すれば、韓国の中国経済に対する依存度は上昇が避けられない。これを踏まえ、中韓両国首脳は近年、頻繁に接触を重ねている。これに伴い、政治、安保、文化などあらゆる分野で「全方位の」交流と協力が進み、経済協力により政治的協力を促す契機ともなる。