私たちは家探しの対象を拡大することにした。高層ビルが北京のシルエットを描いているとすれば、平屋には北京の歴史が潜んでいる。
「胡同」はかつて、北京の市街の主役だった。金銭や近代化に取って代わられる前の話である。この伝統的な住居は今では、大勢が固まって住んでいること、暖房設備が劣っていることで知られている。
あるエージェントによると、外国人はこのような場所に住みたがるが、中国人にはアパートの方が人気だ。外国人は「本当の中国に暮らす」という幻想を求めがちで、室内のリフォームがひどくても、管理サービスのあるマンションより高くても、機能的なトイレがなくても、昔風の住居に住みたがるのだという。近年は胡同の住民や起業精神に富んだ家主が住居内にトイレを設置するようになってはいるが、胡同ではまだ共同トイレが主流である。
地下鉄での出会いがきっかけで、私たちは胡同に住むことになった。
北京に着いた初日、私たちは方向を間違え、予約していた病院に行くことができなくなってしまった。駅の切符売り場にいた米国人女性が携帯電話を貸してくれた。後日、感謝のために彼女を食事に招いたが、まもなく中国を出るという新婚夫婦の話を聞いた。
この夫婦の住んでいる胡同は清代に建てられたもので、現在は、いくつかの住宅に分割されている。故宮の北東3マイルの立地で、多くの木の生えた庭もあり、独立した3つの部屋があるという。
北京に来て100日になろうかという頃、私たちはこの胡同に引っ越すこととなった。
中国でしばしばそうであるように、私たちも我慢強さとコネクションで家を見つけた。どこに住むかを探しているうちに、私たちはここでどう暮らすかを知ることとなった。
この胡同の隣家では以前、鶏が飼われていたという。深夜に鳴き出すうるささに耐えかねて、前に住んできた借り主はこれを買った。メイドにあげたというこの鶏の姿を見ることはその後なかったという。トイレは家のほかの場所とはつながっていない。台所の電灯は引っ越した日に壊れた。だが庭には石の物干し台があって、鳥を眺めるのにぴったりだ。近所の人々は愛想が良く、四声の分けられない私たちの中国語を笑顔で聞いてくれる。
「Chunck」は時折、私たちの家探しの状況を聞いてくる。気に入った家が見つかって良かったが、冬の暖房には十分に注意しなければならないという。衛星アンテナやメイド、空気清浄機は要らないかともたずねてくる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年1月5日