欧州は量的緩和策の拡大を検討しており、日銀はすでに開始している。米連邦準備理事会は、利上げに追われている。世界の金融緩和の観測が高まっている。一部のエコノミストは、世界経済が再び岐路に立たされたとしている。回復を維持する可能性もあるが、新たな危機を迎える可能性もあるというのだ。
2008年に国際金融危機が発生すると、世界の主要中央銀行は量的緩和策、ゼロ金利、マイナス金利を含む一連の金融緩和策を打ち出した。現時点で、連邦準備理事会が昨年末に利上げを開始し、イングランド銀行が金融引き締め策を開始したほか、緩和により経済回復を刺激する方法に根本的な変化は生じていない。昨年第3四半期末まで、世界の33カ国・地域の中央銀行が利下げを64回行い、計18.3%の下げ幅を示した。これは金融危機が最も深刻だった2009年に次ぐ規模となっている。
数年の複数回に渡る超量的緩和策は、世界の実体経済の成長の低迷という状況を覆すことはなかった。経済回復のペースは予想を大幅に下回り、国際貿易の成長はさらに緩慢になっている。世界の生産能力が過剰となり、労働生産性の向上に遅れが生じ、世界の潜在的な経済成長率が低下している。世界貿易機関が発表した報告書によると、過去1年間の世界貿易の成長率は1.2%にとどまり、2008年の金融危機前の10年間の平均6.7%を大きく下回った。貿易の成長は原動力が乏しく、経済成長のけん引力も大幅に低下した。2016年に入り不確定要素が増加するに伴い、市場は危機の匂いを嗅ぎつけたように見える。主なリスクは下記の通りだ。