まず、世界の巨額の債務負担だ。国際決済銀行のデータによると、国際金融危機の発生後、すべての先進国の債務が増加した。政府債務削減に成功した先進国は、わずか5カ国となっている。世界の債務総額は、2007年より57兆ドル増加し、同期の世界のGDPの伸びを大幅に上回っている。各国政府は拡大を続ける経済低迷のリスクを制御するため、レバレッジ引き下げに着手し、債務を処理している。これを受け、多くの国が数年に渡る引き締めを行い、需要全体の増加を制限し、経済成長の原動力の形成に悪影響を及ぼすことになる。
次に、インフレ率の目標未達によるデフレのリスクだ。大口商品の需要の最盛期が終わり、世界の物価水準が低下傾向を示している。JPモルガンの世界インフレデータによると、2015年第2四半期の世界のインフレ率は1.6%のみで、1990−2013年の平均11%を大きく下回った。欧州中央銀行は新たな量的緩和策を打ち出したが、ユーロ圏のインフレ率は0%に低下した。日本は2年ぶりに再びマイナスに転じた。デフレのリスクが世界的に蔓延している。
金融危機後、世界経済の成長の流れと局面にわずかな変化が生じている。経済回復の遅れを改善し、デフレと流動性の罠から脱却するためには、世界の中央銀行による持続的な金融緩和策では不十分だ。これでは症状を根本から治療できないばかりか、市場救済の後遺症が生まれやすい。そのため量的緩和策は、常態的な緊急対策となるべきではない。世界が直面している危機は構造的なものであり、構造的な問題には構造改革で対応しなければならない。新たな「供給の代替」を模索し、全要素生産性を高め、世界の経済成長を着実に促進することが根本的な解決策だ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年2月3日