こうした要因の影響により、日韓をはじめとする成功した追いつき追い越せ型のエコノミーのモデル転換は、10年以上もかかってやっと落ち着きをみせるようになった。挫折の中で経験を積み上げ、新しい成長モデルが徐々に形作られてきた。こうしたエコノミーのモデル転換後の成長モデルには目立った違いがあるが、いずれも高所得国の仲間入りするための支援が行われてきた。韓国の改革は相対的にみて徹底しており、科学技術イノベーションの能力が強化され、一連の新興産業が急速に成長し、サムスンをはじめとする科学技術誘導型の大企業が次々に誕生した。日本の優位性は工場での精密で行き届いた生産にあり、これはコスト引き下げと生産効率向上にはプラスだが、イノベーション能力の低さが、長期的な競争力の向上を制約してきた。
日韓をはじめとするエコノミーがモデル転換で遭遇した問題と課題、制度と政策の変化のプロセスは、中国が自国経済発展の新常態(ニューノーマル)を認識し、対応し、誘導する上で一定の参考になるもので、そこから次の5つの啓示が得られる。
(1)経済成長段階のモデル転換の規律性をしっかりと認識し、規律に対する畏敬の念をもって、先見性のある戦略計画を立てる。
(2)流れに従い目標実現に向かってマクロ政策を調整し、特に需要喚起型の政策によって達成が難しい高度成長を追い求めないようにする必要がある。