文=一般財団法人日中経済協会調査部長 高見澤学
4月19日のインターネットセキュリティ及び情報化事業座談会で、習近平国家主席が述べたように、今や世界中で農業革命、工業革命に続く情報革命が起きており、人類史上稀にみる大きな転換期を迎えている。その強力な推進力となったのが、インターネットをはじめとする通信事業の発展である。なかでもインターネットの発明は画期的なものであり、この発展により、人、カネ、モノ、情報がより広範囲に、そしてよりスムーズに流れるようになり、世界がこれまでに比し一層身近に感じられるようになった。人々の生活は益々便利になり、知らず知らずのうちに豊かになっていった。現代の若者にとって、インターネットの存在は当たり前のことになっていて、インターネットがなかった時代を知っている我々世代とは、まったく異なった考え方になっているのかもしれない。
インターネットの存在が世界経済に及ぼした影響も計り知れないものとなっている。従来の人口ボーナスによる経済の量的規模の拡大に基づく経済発展が、世界的に限界を迎えるようになって久しい。今では、経済の質的向上が求められているが、質的向上を前提とした新たな経済発展のモデルの構築には、今しばらくの時間の猶予が必要なのかもしれない。そして、新たなモデル構築のためには、このインターネットの十分な活用に大きな期待が寄せられるところである。
現状、実際には企業の生産活動や人々の日常生活の中で、インターネットに依存する割合は徐々に増加している。もはやインターネットなしでは生活自体が成り立たないと思う人も少なくないだろう。関連企業では、社会のニーズに合わせて、インターネットに係るハード及びソフト技術の研究開発に邁進し続けている。
インターネット技術の開発は、単なる情報通信分野だけに限られるわけではない。基本はそこにあるとしても、他の産業分野と融合することによって、より幅広いビジネスの可能性が発見できるのである。中国では、社会全体が新常態に入る中で、新たな経済発展の方向性を見出すべく、「中国製造2015」や「インターネットプラス」等の概念が生み出されている。その背景には、こうしたインターネットをめぐる社会環境の変化があるのだ。