プロジェクト・シンジケートによると、中国経済への懸念が日増しに深まっているが、同国は日本の「失われた数十年」に向かっているわけではない。
筆者の生徒は研究論文で、どの国が次の日本になるかを予想し、その半数以上が中国を選択した。しかし筆者は今春の前期終了後、中国を数回に渡り短期訪問したことで、見方を変えた。中国の高官、ビジネスリーダー、生徒、投資家らと広く議論した後、筆者は彼らが日本の教訓と、中国の問題に及ぼしうる影響を極めて重視していることに気づいた。
債務に関する説が、かつてもてはやされたことがある。中国非金融部門の債務残高の対GDP比は、2008年の150%から現在の255%まで上昇している。債務の急拡大のリスクを評価する際に、日本を例とすると説得力がある。日本の2015年の負債残高の対GDP比は390%で、中国を140ポイント上回る。しかし日本は貯蓄率が非常に高く、したがってほぼ内債だ。これは日本では、危機を引き起こす外国人投資家の資本流出の影響を受けにくいことを意味する。中国の2007年以降の貯蓄率は日本の2倍以上をキープしており、上述した結論は中国の債務密集型経済に完全に合致する。ゆえに2016年上半期の中国の恐慌(資本の外部流出と為替リスクに対する無知によるもの)に対する懸念は、まったく要領を得ない。いわゆる中国の債務危機によるハードランディングと恐慌は、大きな誇張だ。
日本が90年代に初の「失われた10年」を迎えた重要な原因は、ゾンビ企業に融資を続けることで日本の金融システムが崩壊したことだ。ゾンビ企業とゾンビ銀行の有害な相互作用が、実体経済の大動脈を詰まらせることで、日本の生産率を急低下させており、これは未だに回復していない。しかし中国指導層は最近、ゾンビ国有企業への言及を避けなかった。これは過去10年に渡り同問題の存在を否定している日本とは正反対だ。中国政府は迅速な行動により、2大重要産業の過剰生産能力を抑制している。
これは中日比較の重要問題を指し示している。改革は両国の決定的な差だ。構造改革の見送りは(日本の)90年代を象徴しており、現在の「アベノミクス」を妨げる重要な障害になっている。中国の戦略は、構造改革とリバランスという困難な任務を強調している。最終的に、(改革の)成否は中国指導部の意思にかかるだろう。(筆者はスティーブン・ローチ)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年6月28日