文=日中経済協会調査部長 高見澤学
10月13日から17日にかけて、習近平国家主席はカンボジア、バングラディシュ、インドの3カ国を訪問している。そのうち15、16日はインド南部のゴアで開催される第8回新興5カ国(BRICS)首脳会議に出席した。今年9月4日、5日に中国浙江省杭州市で主要20カ国(G20)首脳会議が開催され、その際、中国の習主席、インドのモディ首相、南アフリカのズマ大統領、ブラジルのテメル大統領、ロシアのプーチン大統領の間で、BRICS非公式首脳会合が行われている。会合の席上、習主席は、今後新興市場国と発展途上国が国際関係においてより実務的な貢献ができるよう、BRICSが協力してその先駆けとしての役割を果たすことの重要性を強調した。
中国は、経済面では新興市場国や発展途上国の代表として、他のBRICS諸国と協調して世界経済の立て直しに貢献することが求められているとの認識があろう。欧米諸国に保護主義的傾向がみられる中で、今後グローバル経済における新興市場国や発展途上国の影響力が高まっていくことは間違いない。
しかしながら、原油や貴金属など資源価格の低迷が続く中で、ロシアやブラジルなど地下資源に依存している国々の経済情勢は楽観視できるものではない。資源価格の下落は、生産活動や市民生活に係るコストの低減により経済の活性化を促す一方、資源国へ十分な資金が還流しないなど通貨の流動性が阻害され、世界経済が動脈硬化を起こす等のデメリットが生じることになる。以前、チャイナネット(「国民の幸福感と満足度が現代経済学の矛盾を解決」2015年12月30日掲載)の記事で紹介した現代経済学の矛盾が、こうした面でもボトルネックになっており、通貨の流動性のバランスをどこに求めるかが重要なポイントになってくる。