欧州の造船会社は客船業界という1000億ドル市場のリーダーを続けてきたが、中国の競合他社が国内観光客のクルーズ旅行への熱意を受け同業界に進出していることから、この地位が危ぶまれている。米NYタイムズが伝えた。
中国政府は客船製造を「中国製造2025」の主要目標の一つとしており、国内客船製造業のアップグレード、造船会社の雇用拡大を目指している。中国国内のクルーズ旅行の需要は、毎年30%のペースで成長している。この高い価値を持つ客船業界への進出の勢いを受け、豪華客船のリーダーである欧州の造船会社が不安になっている。一部の造船会社は、中国が豪華客船市場のリーダーになると懸念している(中国がこの数十年で、貨物船市場のリーダーになったように)。ドイツ造船・海洋工学連盟(VSM)のラインハルト・ルーケンCEOは「国家目標は競争を大きく歪める恐れがある。中国が目標を立てれば、ほぼ尽きることなき資源を手にする」と述べた。しかし、高級カーペットから防音施工まで複雑なサプライヤー網が必要になるため、中国企業が豪華客船の建造技術を習得するのは容易ではないと、業界内の専門家は指摘している。
中国による客船市場への路線転換には、世界で貨物船需要が落ち込み、数十社の中国の造船会社が廃業に追い込まれたという背景がある。貨物船の受注がなく、多くの大手造船会社も客船製造に転向し、新たな活路を見いださざるを得なくなっている。
中国船舶工業集団は、傘下の上海外高橋造船に欧州のアドバイザーを招き、客船建造でいかに競争力をつけるかを学んでいる。またフィンランドのバルチラなどの外国企業にも、中国の造船会社と合弁を組むよう誘致している。一部の中国国内の造船会社は最大30%の割引と、より早い納期を提示することで、西側のクルーズ運航会社から契約を取ろうとしている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年7月26日